数学の力

京大生が数学の定理・公式の証明や入試問題の解説をするブログ.

定義・定理・公式

解と係数の関係

解と係数の関係この記事では,解と係数の関係とその証明について説明します. 次方程式は重解を含めて 個の解を持ちます. 個の解と,方程式の係数が満たす関係式が解と係数の関係です.特に 2 次,3 次の場合はよく使うので覚えておきましょう.1.2次方程…

重複組合せについて

重複組合せ簡単に組合せ(2項係数)の復習を 個の中から 個を取り出す方法は で計算できます.これは2項定理に登場する係数であることから,2項係数(binomial coefficients)と呼ばれます.2項係数の性質については「二項係数(コンビネーション)の性質まとめ」…

二項係数(コンビネーション)の性質まとめ

二項係数の性質まとめ.定義二項係数は や の記号で書かれ,次の式で定義されます.\begin{align*} {}_nC_k = \binom{n}{k} = \dfrac{n!}{k!(n-k)!} \end{align*}二項係数に関する重要事項.1. (組み合わせ) 個の中から 個を選ぶ方法は 通り. 2. (二項定理)…

Cayleyの定理 (全域木の総数)1. (次数列による方法)

Cayley の定理この記事では,グラフの全域木の個数に関する Cayley の定理を紹介します.定理 (Cayley)任意の自然数 に対して,頂点数が である完全グラフ の全域木の総数は\begin{align*} T(K_n) = n^{n-2} \end{align*}一般のグラフ の全域木の総数を の記…

中線定理を拡張してみた

中線定理を拡張してみた平面図形における中線定理の拡張を考えてみました. まず,中線定理の復習からしておきます.中線定理. において,辺 の中点を とするとき\begin{align*} \mathrm{AB}^2+\mathrm{AC}^2 = 2(\mathrm{AM}^2+\mathrm{BM}^2). \end{align…

2平方定理

2平方定理この定理はフェルマーの2平方定理とも呼ばれることがあり,証明はオイラーによってはじめてなされたとされています.定理.奇素数(奇数かつ素数,すなわち 3 以上の素数) が 4 で割ると 1 余るとき, は 2 つの平方数の和として表される. 例えば,…

等差数列,等比数列,調和数列

数列とは数列とは,文字通り数を列のように並べたものです.例えば,やという感じです.並べる数は整数に限りません. ある数列があるときに,そこに並んでいる数を項(特に,左端から 番目の項を第 項,第1項のことを初項)といい,任意の について第 項が の…

素数に関するオイラーの定理

素数に関するオイラーの定理ここでは,(フェルマーの) 2平方定理の証明で用いる素数に関するオイラーの定理の証明をします. 2平方定理奇素数(奇数かつ素数,すなわち 3 以上の素数) が 4 で割ると 1 余るとき, は 2 つの平方数の和として表される.2平方定…

徳島大学2005年度 (相加相乗平均の不等式の別証明)

相加相乗平均の別証明今回は, 2005年度に徳島大学で出題された, 相加相乗平均の不等式の証明を紹介します.問題. は自然数とする.(1) を正の実数とし, 関数を考える. のとき が成り立つことを示せ.(2) とする. 次の不等式が成り立つことを数学的帰納法によっ…

整数辺をもつ直角三角形

整数辺をもつ直角三角形直角三角形で, 3つの辺の長さがすべて整数であるようなものというといくつぐらい思いつくでしょうか? ただし, 3つの辺の長さが互いに素となるものを考えます.(3, 4, 5)(5, 12, 13)(8, 15, 17)くらいはよく知られていると思います. 実…

整数辺をもつ60°, 120°三角形

整数辺をもつ60°, 120°三角形前回の記事で「整数辺をもつ直角三角形」という記事を書きましたが, 今回は辺の長さが整数で, 60°や120°の内角をもつような三角形について考察していきます. 辺の長さが整数で, 60°や120°の内角をもつような三角形を知っているで…

単位円に内接する正多角形(2)

以前の記事で, 単位円に内接する正多角形のもつ面白い性質として, 次のようなものを紹介しました. (詳しくはこちら)定理. 単位円に内接する正 角形のある頂点から, 他の 個の頂点への距離の積は .(このときは, この定理を示すために Vandermonde行列を使った…

複素数の極形式表示

複素数の極形式表示この記事では, 複素数の表し方の極形式を紹介します. これまでは複素数 は\begin{align*} z = a + bi \end{align*}( は実数)と表していました. 極形式では,三角関数 を使って,複素数を表現します. 極形式複素数 を\begin{align*} z = …

複素数とは何か?

複素数とは何か?久しぶりの記事になります.今回は複素数について説明していきます.複素数, 虚数などの混同しやすい言葉の違いと, 基本的な計算の仕方を紹介します. 虚数単位 これまで扱ってきた実数では, 数を 2 乗すると非負 (0 以上)になりました. 実数の…

複素数の重要な性質

複素数の重要な性質前回の記事-->「複素数とは何か?」今回は, 複素数平面, 複素数の絶対値, 共役な複素数などについて説明していきます. 複素数平面 (ガウス平面)座標平面上の点 が複素数 を表すと考えるとき, この座標平面を複素数平面 (複素平面), ガウス…

シムソンの定理の簡単な証明

シムソンの定理(ウォーレスの定理)の簡単な証明以前の記事でシムソンの定理の極座標による証明を書きましたが, 実は簡単な幾何による証明が可能なので, 紹介します. シムソンの定理とはシムソンの定理の内容を改めて説明します. 定理.三角形 の外接円の円周…

単位円に内接する正多角形

単位円に内接する正多角形今回の記事では, タイトルにも書いたように, 単位円に内接する正多角形に関する面白い定理を紹介します.定理. 単位円に内接する正 角形のある頂点から, 他の 個の頂点への距離の積は . 例.いくつか例を見てみましょう.・正三角形の…

ラグランジュの四平方定理

ラグランジュ(Lagrange) の四平方定理以前,三平方の定理の拡張である四平方の定理を紹介しました.(-->四平方定理)ラグランジュの四平方定理は,定理の名前は同じですが,全く違う内容の定理です.定理. 全ての自然数は,高々 4 個の平方数の和で表される.…

逆・裏・対偶と否定

逆・裏・対偶と否定今回の記事では, タイトルにも書いたように, 命題の逆, 裏, 対偶と否定について説明していきます. そもそも命題とはまず, 命題とは, 真 (その文が正しい) か, 偽 (間違っている) かが定まるような文のことを言います.例えば,「9 は 3 の倍…

2×2 正方行列の n 乗-Vol.1

2行2列 正方行列の n 乗高校の学習範囲から行列は今はなくなりましたが, 行列の 乗を求めさせる問題は沢山ありました.そこで, 今回は一般の 2×2 行列\begin{align} A=\left(\begin{array}{ll} a & b\\ c & d \end{array}\right) \end{align}の 乗がどのよう…

2×2 正方行列の n 乗-Vol.2

2行2列 正方行列の n 乗前の記事 『2×2 正方行列の n 乗-Vol.1』の続きとして,2行2列の行列の 乗の導出法(2つ目)を紹介します. まずは結果から前回書いた通りですが, もう一度書いておきます. について,2 次方程式について[1] 重解 をもつとき\begin{align*}…

隣接3項間の漸化式の一般項

隣接3交換の漸化式の一般項漸化式から数列の一般項を求める問題でよく出てくるのが, 3項間の漸化式の形のものです. 今回は, 一般の に対して一般項 を求めてみます. 先に結果から...初項 , 第 2 項 , を満たす数列 の一般項は,2 次方程式 (特性方程式)\begin…

ヘルダーの不等式(Cauchy-Schwarzの不等式の一般化)

ヘルダーの不等式ドイツの数学者, オットー・ルードウィヒ・ヘルダー(Otto Ludwig Hölder)が発見した不等式です. , は非負の実数で, は\begin{align*} \dfrac{1}{p}+\dfrac{1}{q}=1 \end{align*}を満たす正の実数とすると,不等式\begin{align*} \left(\sum_{…

べき乗和の公式 (Faulhaber の公式)

べき乗和の公式公式.\begin{align*} \sum_{k=1}^n k &= 1+2+\cdots+n = \dfrac{1}{2}n(n+1)\\ \sum_{k=1}^n k^2 &= 1^2+2^2+\cdots+n^2 = \dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\\ \sum_{k=1}^n k^3 &= 1^3+2^3+\cdots+n^3 = \left\{\dfrac{1}{2}n(n+1)\right\}^2\\ \sum…

シムソンの定理の極座標による証明

シムソンの定理定理.三角形 の外接円の円周上に, 3 点 とは異なる点 をとる.点 から 3 直線 に下ろした垂線の足をそれぞれ とすると, 3 点 は同一直線上にある. このときの 3 点 を通る直線のことを, シムソン線といいます. この定理自体は, 三角形や円に関…

三角形の存在条件

三角形の存在条件三角形の存在条件とは三角形の存在条件とは, 3つの数 が与えられたときに, 3辺の長さがそれぞれ であるような三角形が存在するための条件です. 定理. 3辺の長さがそれぞれ である三角形が存在するための必要十分条件は,が成り立つことである…

ユークリッドの互除法

ユークリッドの互除法最大公約数の計算ユークリッドの互除法とは, 2つの整数に対して, その最大公約数を計算するときに使う方法です. 最大公約数は, 通常は素因数分解を用いて次のように求めます. 例として, 2016 と 210 の最大公約数を考えます.\begin{alig…

三平方の定理(ピタゴラスの定理)

この定理はおそらく平面図形に関する定理の中で, おそらくもっとも有名な定理です. 定理. (三平方, ピタゴラス) 直角三角形において, 直角を挟む2辺の長さを ,残りの辺(斜辺)の長さを とするとき, 次の式が成り立つ.\begin{align*} a^2+b^2=c^2 \end{align*}…

四平方の定理 ~三平方の定理の拡張~

四平方の定理三平方の定理というと, 直角三角形において,(斜辺の2乗) = (他の2辺の2乗の和)が成り立つという有名な定理です.ここでは, 三平方の定理(平面上の定理)を3次元に拡張した, 四平方の定理を紹介します. 定理. 3つの面が直角三角形で, 1つの頂点に直…

ペル方程式の最小解の求め方

ペル方程式とはペル方程式は,但し, は正の整数で, は自然数の定数(平方数でない)です. この方程式の最小解 が分かると, すべての解を求めることができます. このことについては, 以前の記事「ペル方程式とその解法」に詳しい事は書いてあります. 以前の記事…