数学の力

現役京大生が数学の定理・公式の証明や入試問題の解説をするブログ.

コーシー・シュワルツの不等式のその他の証明~ラグランジュの恒等式

以前の記事「コーシー・シュワルツの不等式」の続きとして, 前回書かなかった別の証明方法を紹介します.

コーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式は次のような不等式です.

 


 (a^2+b^2)(x^2+y^2)\geqq (ax+by)^2

等号は a:x=b:yのときのみ

 (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2

等号は a:x=b:y=c:zのときのみ

 (a_1^2+a_2^2+\cdots+a_n^2)(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2)\geqq(a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_nx_n)^2

等号は a_1:x_1=a_2:x_2=\cdots=a_n:x_nのときのみ

但し,  a, b, c, x, y, z, a_1, \cdots, a_n, x_1, \cdots, x_nは実数.

 

利用する例などは前回の記事を参照してください.

 

証明.

1. ラグランジュ恒等式の利用

ラグランジュ恒等式
\begin{align}\left(\sum_{k=1}^n a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^n b_k^2\right)=\left(\sum_{k=1}^n a_kb_k\right)^2+\sum_{1\leqq k < l \leqq n}(a_k b_l-a_lb_k)^{2}\end{align}
 

例えば,  n=2のとき

\begin{align*}
(a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2)=(a_1b_1+a_2b_2)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2
\end{align*}

 n=3のとき

\begin{align*}
(a_1^2+a_2^2+a_3^2)(b_1^2+b_2^2+b_3^2)=(a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2\\+(a_2b_3-a_3b_2)^2+(a_3b_1-a_1b_3)^2
\end{align*}

となります. (両辺ともに展開すれば等しいことが分かります. )

 

この恒等式の右辺の最後の部分

\begin{align} \displaystyle \sum_{1\leqq k < l\leqq n}(a_{k}b_{l}-a_{l}b_{k}) ^{2}\end{align}


は2乗したものの和なので, 0以上となります. このことから, コーシー・シュワルツの不等式が成り立ちます.

 

2. 帰納法を使う場合

コーシー・シュワルツの不等式は数学的帰納法で示すこともできます.

 

 n=2の場合については上と同じ考え方をして,

\begin{align*}
(a_1^2+a_2^2)(b_1^2+b_2^2)-(a_1b_1+a_2b_2)^2 &= (a_1^2b_1^2+a_1^2b_2^2+a_2^2b_1^2+a_2^2b_2^2)\\
& \quad-(a_1^2b_1^2+2a_1a_2b_1b_2+a_2^2b_2^2)\\
&= a_1^2b_2^2-2a_1a_2b_1b_2+a_2^2b_1^2\\
&= (a_1b_2-a_2b_1)^2\\
&\geqq 0
\end{align*}

から成り立ちます.

 

次に,  n=i(\geqq 2)のときに成り立つと仮定すると,

\begin{align*}
\left(\sum_{k=1}^i a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^i b_k^2\right)\geqq\left(\sum_{k=1}^i a_kb_k\right)^2
\end{align*}

が成り立ち, 両辺を \displaystyle\frac{1}{2}乗すると, 次の不等式になります.

 

\begin{align*}
\left(\sum_{k=1}^i a_k^2\right)^{\frac{1}{2}}\left(\sum_{k=1}^i b_k^2\right)^{\frac{1}{2}}\geqq\sum_{k=1}^i a_kb_k
\end{align*}

 

さて,  n=i+1のとき

\begin{align*}
\left(\sum_{k=1}^{i+1}a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^{i+1}b_k^2\right)&= \left\{\left(\sum_{k=1}^i a_k^2\right)+a_{i+1}^2\right\}\left\{\left(\sum_{k=1}^i b_k^2\right)+b_{i+1}^2\right\}\\
&\geqq \left\{\left(\sum_{k=1}^ia_k^2\right)^{\frac{1}{2}}\left(\sum_{k=1}^ib_k^2\right)^{\frac{1}{2}}+a_{i+1}b_{i+1}\right\}^2\\
&\geqq \left\{\left(\sum_{k=1}^i a_kb_k\right)+a_{i+1}b_{i+1}\right\}^2\\
&= \left(\sum_{k=1}^{i+1}a_kb_k\right)^2
\end{align*}

 

となり, 不等式が成り立ちます.

但し, 2行目から3行目の変形は2項の場合のコーシー・シュワルツの不等式を利用し, 3行目から4行目の変形は仮定を利用しています.

コーシー・シュワルツの不等式とその利用


コーシー・シュワルツ(Cauchy-Schwartz)の不等式

 (a^2+b^2)(x^2+y^2)\geqq (ax+by)^2

等号は a:x=b:yのときのみ.

 (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2)\geqq(ax+by+cz)^2

等号は a:x=b:y=c:zのときのみ.

 (a_1^2+a_2^2+\cdots+a_n^2)(x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2)\geqq(a_1x_1+a_2x_2+\cdots+a_nx_n)^2

等号は a_1:x_1=a_2:x_2=\cdots=a_n:x_nのときのみ.

但し, a, b, c, x, y, z, a_1, \cdots, a_n, x_1, \cdots, x_nは実数.

 

和の記号を使って表すと,

 

 \displaystyle\left(\sum_{k=1}^{n} a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^{n} b_k^2\right)\geqq\left(\sum_{k=1}^{n} a_kb_k\right)^2

となります.

 

例題.

問. 

 x^2+y^2=1を満たすように x, yを変化させるとき, 2x+3yの取り得る最大値を求めよ.

 

このタイプの問題は普通は 2x+3y=kとおいて,この式を直線の方程式と見なすことで,円 x^2+y^2=1と交点を持つ状態で動かし,直線の y切片の最大値を求める,ということをします.

 

しかし, コーシー・シュワルツの不等式を使えば簡単に解けます.

 

コーシー・シュワルツの不等式より,

\begin{align}
(2^2+3^2)(x^2+y^2)\geqq (2x+3y)^2
\end{align}

ところで, x^2+y^2=1なので上の不等式の左辺は 13となり,

\begin{align}
13\geqq(2x+3y)^2
\end{align}

よって,

\begin{align}
2x+3y \leqq \sqrt{13}
\end{align}

となり最大値は \sqrt{13}となります.

 

コーシー・シュワルツの不等式の証明.

この不等式にはきれいな証明方法があるので紹介します.

(この方法以外にも,帰納法でも証明できます.それは別の記事で紹介します.)

 

任意の実数 tに対して,

\begin{align}
f(t)=\sum_{k=1}^{n}(a_kt+b_k)^2\geqq 0
\end{align}

が成り立つ(実数の2乗は非負).

左辺を展開すると,

\begin{align}
\left(\sum_{k=1}^{n}a_k^2\right)t^2+2\left(\sum_{k=1}^{n}a_kb_k\right)t+\left(\sum_{k=1}^{n}b_k^2\right)\geqq 0
\end{align}

これが任意の tについて成り立つので, f(t)=0の判別式を Dとすると D/4\leqq 0が成り立ち,

\begin{align}
\left(\sum_{k=1}^{n}a_kb_k\right)^2-\left(\sum_{k=1}^{n}a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^{n}b_k^2\right)\leqq 0
\end{align}

よって,

\begin{align}
\left(\sum_{k=1}^{n} a_k^2\right)\left(\sum_{k=1}^{n} b_k^2\right)\geqq\left(\sum_{k=1}^{n} a_kb_k\right)^2
\end{align}

 

その他の形のコーシー・シュワルツの不等式

コーシー・シュワルツの不等式というと上で紹介したものが有名ですが,実はほかに以下のようなものがあります.

 

1. (複素数)

 \displaystyle \left(\sum_{k=1}^{n} |\alpha_k|^2\right)\left(\sum_{k=1}^{n}|\beta_k|^2\right)\geqq\left|\sum_{k=1}^{n}\alpha_k\beta_k\right|^2

 \alpha_k, \beta_k複素数で,複素数の絶対値は, \alpha=a+biに対して |\alpha|^2=a^2+b^2.

 

2. (定積分)

 \displaystyle \int_a^b \sum_{k=1}^n \left\{f_k(x)\right\}^2dx\cdot\int_a^b\sum_{k=1}^n \left\{g_k(x)\right\}^2dx\geqq\left\{\int_a^b\sum_{k=1}^n f_k(x)g_k(x)dx\right\}^2

但し,閉区間[a, b]で f_k(x), g_k(x)は連続かつ非負,また,[tex: a
 

これらも上の証明方法で同様に示すことができます.

2項定理の応用2(自作問題1-(9))

問題.

問題.

 x^{2n} (x-2)^nで割ったときの商を Q(x), 余りを R(x)とする.

 R(x)の最高次の項の係数と, 定数項を求めよ.  n自然数とする.

 

整式の割り算の問題.  (x-2)^nで割った余りなので, 剰余の定理では処理できません.

そこで,

 x^{2n}=(x-2)^nQ(x)+R(x)

のような形をつくるために,

 x^{2n}=\{(x-2)+2\}^n

と考えて展開します.

 

 

 

 

 

 

 

 

解答例.

\begin{align*}
P(x) &= x^{2n}\\
&= \{(x-2)+2\}^{2n}\\
&= \sum_{k=0}^{2n} {}_{2n}C_k\cdot (x-2)^k\cdot 2^{2n-k}\\
&= (x-2)^n \sum_{k=n}^{2n} {}_{2n}C_k\cdot (x-2)^{k-n}\cdot 2^{2n-k} + \sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot (x-2)^k\cdot 2^{2n-k}
\end{align*}

より,

\begin{align*}
Q(x) &= \sum_{k=n}^{2n} {}_{2n}C_k\cdot (x-2)^{k-n}\cdot 2^{2n-k}\\
R(x) &= \sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot (x-2)^k\cdot 2^{2n-k}
\end{align*}

 R(x)の最高次の項は x^{n-1}の項で,  k=n-1のときのみ出てくるので, その係数は

\begin{align*}
{}_{2n}C_{n-1}\cdot 2^{2n-(n-1)} = {}_{2n}C_{n-1}\cdot 2^{n+1}
\end{align*}

次に,  (x-2)^kの展開式の定数項は (-2)^kなので,  R(x)の定数項は,

\begin{align*}
\sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot(-2)^k\cdot 2^{2n-k} &= \sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C{k}\cdot (-1)^k\cdot 2^{2n}\\
&= 2^{2n}\sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot (-1)^k
\end{align*}

ここで,

\begin{align*}
\sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot (-1)^k &= \sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_{2n-k} \cdot (-1)^{2n-k} \\
&= \sum_{k=n+1}^{2n} {}_{2n}C_k\cdot (-1)^k
\end{align*}

最後の変形では 2n-k kと改めておき直して, 和の順番を逆にしています.

よって,

\begin{align*}
2\sum_{k=0}^{n-1}{}_{2n}C_k\cdot (-1)^k + {}_{2n}C_n\cdot(-1)^n &= \sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot (-1)^k + {}_{2n}C_n\cdot(-1)^n+\sum_{k=n+1}^{2n}{}_{2n}C_k\cdot(-1)^k\\
&= \sum_{k=0}^{2n}{}_{2n}C_{k}\cdot (-1)^k\\
&= (-1+1)^{2n}\\
&= 0
\end{align*}

となるので,

\begin{align*}
\sum_{k=0}^{n-1} {}_{2n}C_k\cdot(-1)^k = -\frac{1}{2}\cdot {}_{2n}C_n\cdot(-1)^n
\end{align*}

従って,  R(x)の定数項は

\begin{align*}
2^{2n}\times \left\{-\frac{1}{2}\cdot{}_{2n}C_n\cdot(-1)^n\right\} = -\frac{1}{2}\cdot(-4)^n\cdot {}_{2n}C_n
\end{align*}

コンビネーションと和の計算(自作問題(8))

問題.

今回は, 自作問題の1-(8),コンビネーションと和の計算の解答,解説です.

 

問題 :

 \displaystyle p_n = \sum_{k=0}^n k\cdot{}_nC_k

及び,

 \displaystyle q_n = \sum_{k=n+1}^{2n} {}_kC_n

をそれぞれ計算せよ.但し, n自然数である.

 

今回の問題は,コンビネーションの計算において重要なものを集めた形になっています.

 

 p_n については,まず

 1\leqq k\leqq n のとき

 k\cdot {}_nC_k = n\cdot {}_{n-1}C_{k-1}

という性質(変形)を使います.この等式を示すための変形は下の解答例の中に書いています.

 

そして, 二項定理

 \displaystyle (a+b)^n=\sum_{k=0}^{n} {}_nC_k\cdot a^k\cdot b^{n-k}

において, a=b=1,  n の部分を  n-1 とした式を利用します.

 

 q_n については,コンビネーションが満たす式

 {}_nC_k = {}_{n-1}C_{k-1}+{}_{n-1}C_{k}

を利用します.

 

 

 

 

 

 

 

解答例.

 p_nについて

 k=0 のとき  k\cdot{}_nC_k=0 なので, \displaystyle p_n=\sum_{k=1}^{n} k\cdot{}_nC_k

 n=1 のとき

\begin{align*}
p_1=1\cdot {}_1C_1=1
\end{align*}

 n\geqq 2 のとき

\begin{align*}
k\cdot{}_nC_k &=  k\cdot\frac{n!}{k!(n-k)!}\\
&=  n\cdot\frac{(n-1)!}{(k-1)!(n-k)!}\\
&=  n\cdot{}_{n-1}C_{k-1}
\end{align*}

なので,

\begin{align*}
p_n &=  \sum_{k=1}^{n} n\cdot{}_{n-1}C_{k-1}\\
&=  n\sum_{k=1}^{n} {}_{n-1}C_{k-1}\\
&=  n\sum_{k=0}^{n-1} {}_{n-1}C_{k}\\
&=  n\cdot 2^{n-1}.
\end{align*}

2行目から3行目は, k-1 を改めて  k とおき直しています.

この式は  n=1 のときも成り立つので, p_n = n\cdot 2^{n-1}.

 

 q_n について

 {}_kC_n + {}_kC_{n+1} = {}_{k+1}C_{n+1} が成り立つことから,

 {}_kC_n = {}_{k+1}C_{n+1}-{}_kC_{n+1} なので,
\begin{align*}
q_n &= \sum_{k=n+1}^{2n} {}_kC_n\\
&= \sum_{k=n+1}^{2n} ({}_{k+1}C_{n+1}-{}_kC_{n+1})\\
&= {}_{2n+1}C_{n+1}-{}_{n+1}C_{n+1}\\
&= {}_{2n+1}C_{n+1}-1.
\end{align*}

 

2行目から3行目では別の記事「特殊な形の和の計算」で紹介した形になっています.

三角形の五心とその性質

三角形の五心

三角形には, 内心, 外心, 重心, 垂心, 傍心という5種類の「中心」が存在します.

 

この記事では, それらの定義と性質を紹介します.

 

内心

定義 : inner_center

三角形の3つの頂点の二等分線は1点で交わり, その点を三角形の内心という.

 

 

内心  \mathrm{I}は, 三角形の内接円(3つの辺すべてに接する円)の中心になっています.

なので, \mathrm{I}から三角形の各辺に下ろした垂線の長さが等しくなります.

 

外心

定義outer_center

三角形の3辺の垂直二等分線は1点で交わり, その点を三角形の外心という.

 

 

外心 \mathrm{O}は, 三角形の外接円(三角形の3つの頂点すべてを通る円)の中心になっています.

なので, 上の図では,  \mathrm{OA}=\mathrm{OB}=\mathrm{OC}が成り立っています.

 

重心

定義center_of_trianglge

三角形の3本の中線(頂点と向かい合った辺の中点を結ぶ線分)は1点で交わり, その点を三角形の重心という.

 

 

重心は, 重さの中心で, 三角形の板の重心を糸でぶら下げると水平に釣り合います.

三角形の重心 \mathrm{G}は, 3本の中線を 2:1に内分することが知られています.

上の図では,  \mathrm{AG} : \mathrm{GD} = \mathrm{BG} : \mathrm{GE} = \mathrm{CG} : \mathrm{GF} = 2 : 1です.

垂心

定義orthocenter

三角形の各頂点から対辺に下ろした垂線は1点で交わり, その点を三角形の垂心という.

 

 

内心, 重心, 垂心の存在は, チェバの定理の逆を用いて証明できます.

(--->チェバの定理の逆の利用例)

 

傍心

定義 :

三角形のある内角の2等分線と, 他の2頂点の外角の2等分線は1点で交わり, その点を三角形の傍心という. 頂点の選び方によって, 傍心は3つ存在する.

三角形 ABCの3つの傍心を \mathrm{I}, \mathrm{I}^\prime, \mathrm{I}^{\prime\prime}として, 内心を \mathrm{I}_0とすると,  \mathrm{I}_0 \triangle{\mathrm{I}\mathrm{I}^\prime \mathrm{I}^{\prime\prime}}の垂心となっている.

 

三角形の五心がもつ他の性質

1. 正三角形の場合

正三角形においては, 内心, 外心, 重心, 垂心の4つの点はすべて一致します.

また, 三角形の内心, 外心, 重心, 垂心のうち2つ以上が一致するとき, その三角形が正三角形であるといえます.この証明は中学レベルの合同を使った証明の良い練習になるかと思います.

 

2. 外心, 重心, 垂心の関係

三角形の形に関係なく, 外心を \mathrm{O}, 重心を \mathrm{G}, 垂心を \mathrm{H}とすると, この3点 \mathrm{O}, \mathrm{G}, \mathrm{H}は一直線上にあって, 次の式が成り立ちます.

 \mathrm{OG} : \mathrm{GH} = 1 : 2

このとき,外心,重心,垂心を通る直線のことをオイラーといいます.

 

2項定理の応用(自作問題1-(7))

問題.

今回は, 自作問題の1-(7), 2項定理の応用問題の解答, 解説です.

 

問題. 

 \displaystyle \left(x+\frac{1}{4x}-1\right)^n

を展開したときの定数項を求めよ. 但し,  n自然数の定数である.

 

この問題は一見すると多項定理を使う問題です.

 

多項定理 : 

 (a+b+c)^nを展開したときの一般項は,

 \displaystyle \frac{n!}{p!q!r!}\cdot a^p\ b^q\ c^r,  (p+q+r=n)

と書ける.

 

しかし, このページの最後に追記として載せておきますが, この方法では上手く計算できません.

 

今回の問題では, 式を変形して, 2項定理を使います.

2項定理 : 

 (a+b)^nを展開したときの一般項は,

 \displaystyle {}_nC_{p}\cdot a^p\ b^{n-p}

と書ける.

 

 

 

 

 

 

解答例.

\begin{align*}
\left(x+\frac{1}{4x}-1\right)^n &= \left(\frac{4x^2+1-4x}{4x}\right)^n\\
&= \left\{\frac{(2x-1)^2}{4x}\right\}^n\\
&= \frac{(2x-1)^{2n}}{(4x)^n}
\end{align*}

なので, まず (2x-1)^{2n}を展開したときの x^nの係数を求めます.

 (2x-1)^{2n}を展開したときの一般項は

\begin{align*}
{}_{2n}C_k\cdot(2x)^k\cdot(-1)^{2n-k} = {}_{2n}C_k \cdot 2^k\cdot(-1)^k\cdot x^k
\end{align*}

なので,  x^nの係数は {}_{2n}C_n\cdot 2^n\cdot(-1)^n.

よって, 元の式を展開したときの定数項は

\begin{align*}
\frac{1}{4^n}\times \{{}_{2n}C_n\cdot 2^n\cdot(-1)^n\} = {}_{2n}C_n\cdot \left(-\frac{1}{2}\right)^n
\end{align*}

 

追記.

今回の問題をはじめに式変形せずに多項定理を使うと,

展開したときの一般項が

\begin{align*}
\frac{n!}{p!q!r!}\cdot x^p\cdot \left(\frac{1}{4x}\right)^q\cdot(-1)^r = \frac{n!}{p!q!r!}\cdot \left(\frac{1}{4}\right)^q(-1)^r\cdot x^{p-q}
\end{align*}

となるので, 定数項では p-q=0, つまり p=q.

 

このとき p+q+r=nから r=n-2pであり, 上の式に代入して,

\begin{align*}
\frac{n!}{p!p!(n-2p)!}\cdot \left(\frac{1}{4}\right)^p(-1)^{n-2p}=\frac{n!}{p!p!(n-2p)!}\cdot \left(\frac{1}{4}\right)^p(-1)^{n}
\end{align*}

 

この形の項の和を求めればいいので, 求めるべき定数項は和の記号を使って次のように書けます.

\begin{align*}
\sum_{0\leqq 2p\leqq n} \frac{n!}{p!p!(n-2p)!}\cdot \left(\frac{1}{4}\right)^p(-1)^{n}
\end{align*}

 

しかし, この複雑な計算をすることは難しいです(もしかしたら方法があるかもしれませんが).

 

解答例のはじめの部分の変形に気付けるか, という問題でした.

対数と区分求積法(自作問題1-(6))

問題.

自作問題集の1-(6), 区分求積法の問題の解答, 解説をしていきます.

問題. 

自然数 nに対して

 \displaystyle a_n=\frac{1}{n}\sqrt[n]{1\cdot 3\cdots(2n-1)}

とおくとき, 極限 \displaystyle \lim_{n\to\infty} a_nを求めよ.

 

区分求積法の問題が自作問題に多いのは, 私が区分求積法好きだからです.

さて, 前回の問題(1-(5))同様に, 両辺の自然対数をとって,  \displaystyle \lim_{n\to\infty} \log{a_n}を計算していきます.

 

しかし, 今回の問題では n乗根の中( 1\cdot 3\cdots(2n-1))を上手く変形しなければ区分求積法が使えないようになっています. その変形に気付けるかがポイントとなっています.

 

 

 

 

 

 

解答例.

まず n乗根の中を計算して,

\begin{align*}
1\cdot 3\cdots(2n-1) &= \frac{1\cdot 2\cdot 3\cdots (2n)}{2\cdot 4\cdots (2n)}\\
&= \frac{(2n)!}{2^nn!}\\
&= \frac{1}{2^n}\cdot (2n)(2n-1)\cdots(n+1)
\end{align*}

となるので,

\begin{align*}
\log{a_n} &= \log{\sqrt[n]{\frac{1}{n^n}1\cdot 3\cdots(2n-1)}}\\
&= \frac{1}{n}\log\left\{\frac{1}{n^n}\cdot1\cdot3\cdots(2n-1)\right\}\\
&= \frac{1}{n}\log\left\{\frac{1}{n^n}\cdot\frac{1}{2^n}\cdot(2n)(2n-1)\cdots(n+1)\right\}\\
&= \frac{1}{n}\log\left\{\frac{1}{n^n}\cdot(2n)(2n-1)\cdots(n+1)\right\}-\log{2}\\
&= \frac{1}{n}\log\left(\frac{n+1}{n}\cdot\frac{n+2}{n}\cdots\frac{2n}{n}\right)-\log{2}\\
&= \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}\log{\frac{n+k}{n}}-\log{2}\\
&= \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}\log\left(1+\frac{k}{n}\right)-\log{2}
\end{align*}

よって,

\begin{align*}
\lim_{n\to\infty} \log{a_n} &= \lim_{n\to\infty} \left\{\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \log\left(1+\frac{k}{n}\right) -\log{2}\right\}\\
&= \int_{0}^{1} \log(1+x) dx - \log{2}\\
&= \Big[(1+x)\log(1+x)-x\Big]_{0}^{1} - \log{2}\\
&= 2\log{2} - 1 - \log{2}\\
&= \log{\frac{2}{e}}
\end{align*}

従って, 対数関数の連続性から,

\begin{align*}
\lim_{n\to\infty} a_n = \frac{2}{e}
\end{align*}

 

追記.

上の解答例のような変形に気付けなかった場合,

\begin{align*}
\log{a_n} &= \log\left(\frac{1}{n}\sqrt[n]{1\cdot 3\cdots(2n-1)}\right)\\
&= -\log{n}+\frac{1}{n}\log\{1\cdot 3\cdots(2n-1)\}\\
&= -\log{n}+\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \log(2k-1)\\
&= \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \left\{\log(2k-1)-\log{n}\right\}\\
&= \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n} \log{\frac{2k-1}{n}}
\end{align*}

のようになり, 区分求積法が使える形

 \displaystyle \frac{1}{n}\sum_{k=1}^n f\left(\frac{k}{n}\right)

になりません.

 

追記の追記.

上の追記で, 変形に気付けなければ解けないと書きましたが, はさみうちの原理を使って解くことができるので, 説明しておきます.

 

\begin{align*}
\log{\frac{2k-2}{n}}<\log{\frac{2k-1}{n}}<\log{\frac{2k}{n}}
\end{align*}

であること(対数関数の単調増加性による)を用いて,

\begin{align*}
\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log{\frac{2k-2}{n}}<\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log{\frac{2k-1}{n}}<\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log{\frac{2k}{n}}\\
\therefore \frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n-1}\log{\frac{2k}{n}}<\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log{\frac{2k-1}{n}}<\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log{\frac{2k}{n}}
\end{align*}

 n\to\inftyとすればこの不等式の左右の項はともに

\begin{align*}
\int_0^1 \log{2x}\,dx
\end{align*}

に収束します(区分求積法).

この積分を計算すると,

\begin{align*}
\int_0^1 \log{2x}\,dx &= \Big[x\log{2x}-x\Big]_0^1\\
&= \log{2}-1\\
&= \log{\frac{2}{e}}
\end{align*}

( x=0において \log{2x}は定義されませんが,  x\to +0のとき x\log{2x}\to 0なので, 形式的に 0\log{2\cdot 0}=0とします. )

はさみうちの原理より

\begin{align*}
\frac{1}{n}\sum_{k=1}^n\log{\frac{2k-1}{n}}\to\log{\frac{2}{e}}
\end{align*}

と求まります.