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逆・裏・対偶と否定


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逆・裏・対偶と否定

今回の記事では, タイトルにも書いたように, 命題の逆, 裏, 対偶と否定について説明していきます.

 

そもそも命題とは

まず, 命題とは, 真 (その文が正しい) か, 偽 (間違っている) かが定まるような文のことを言います.

例えば,

「9 は 3 の倍数である」

 \sqrt{2}有理数である」

は命題です (上の例は真, 下の例は偽) が,

 10^{100} は大きい数である」

は命題ではありません.

この場合, 何と比べて  10^{100} が大きいのかが書かれていないので, 人によっては大きい数と思うでしょうし,  10^{100} が小さいと感じる人もいるかもしれないからです.

 

逆・裏・対偶

 A ならば  B」 という形をした命題に対して, 逆, 裏, 対偶という 3 つの命題を考えることができます.

逆 : 「 B ならば  A

裏 : 「 \overline{A} ならば  \overline{B}

対偶 : 「 \overline{B} ならば  \overline{A}

 

ここで,  \overline{A}, \overline{B} は命題  A,  B の否定を意味します.

簡単に言えば, 「 \overline{A}」 は 「 Aでない」と捉えて構いません.

 

例を挙げると, 元の命題を

 n が 4 の倍数ならば,  n は偶数」

(A=「 n が 4 の倍数」, B=「 n が偶数(2の倍数)」となっています)

とすると,

逆 : 「 n が偶数ならば,  n は 4 の倍数」

裏 : 「 n が 4 の倍数でないならば,  n は偶数でない」

対偶 : 「 n が偶数でないならば,  n は 4 の倍数ではない」

 

逆, 裏, 対偶の真偽

上の例において, 各命題の真偽を考えてみましょう.

 

元の例題と対偶は真ですが,

逆は  n=2, 6, 10 など 偶数であって 4 の倍数でないものが存在するので偽,

裏は  n=2, 6, 10 など 4 の倍数でないが偶数ではあるものが存在するので偽

となります.

 

逆と裏における反例 ( n=2, 6, 10) が一致していることからも分かりますが, 一般にどのような場合も 元の命題と対偶, 逆と裏の真偽はそれぞれ一致します.

 

ただし, 元の命題と逆の真偽は一致する場合としない場合の両方があるので注意しましょう.

 

集合の包含関係との関連

命題の真偽が対偶の真偽と一致するという事実は, 集合の包含関係と関連があります.

 

命題  A,  B と対応させて, 次の集合を考えます.

 A^\prime : 4 の倍数全体

 B^\prime : 偶数全体

 

このとき, 命題 「 A ならば  B」が真であるということは

集合でいうと

 A^\prime\subset B^\prime

を意味しています.

 

また, 命題の否定は補集合に対応させて,

 \overline{A}^\prime: 4 の倍数でない整数全体

 \overline{B}^\prime: 2 の倍数でない整数全体

とすると, 対偶「 \overline{B} ならば  \overline{A}」が真であることは,

 \overline{B}^\prime\subset\overline{A}^\prime

を意味しています.

 

命題の否定

次のような命題を考えてみましょう.

X: 「「 n が奇数ならば  a^n<0」ならば  a<0

 

この命題  X の対偶は,

 a\geqq0 ならば (「 n が奇数ならば  a^n<0」が偽)」

このような場合に出てくる, 「A ならば B」の否定を考えていきます.

まず, 命題の否定とは, 元の命題と真偽が必ず異なる命題のことを言います.

例えば 「 n は偶数」と否定「 n は奇数」はどんな自然数  n に対してもどちらか一方のみが真でもう一方は偽になります.

 

次に, 「A ならば B」という命題を考えます.

この命題は, A が真であって B が偽であるような場合のみ偽となります.

注意すべき点は, A が偽である場合, 命題 B に関係なく「A ならば B」は真になるところです.

 

例として挙げていた命題

 n が 4 の倍数ならば  n は偶数」は真ですが, 例えば n=3 とした場合の

「3 が 4 の倍数ならば 3 は偶数」も真になります.

(「 n が 4 の倍数ならば  n は偶数」というのは, 「すべての自然数  n について,  n が 4 の倍数ならば  n は偶数」という意味なので, 自然数のうちの1つである  n=3 としても真になるわけです. )

 

このように考えると, 命題「A ならば B」の否定は, A が真であって B が偽である場合のみ真となる命題なので, 「A かつ (Bでない)」となります.