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素数に関するオイラーの定理


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素数に関するオイラーの定理

ここでは,(フェルマーの) 2平方定理の証明で用いる素数に関するオイラーの定理の証明をします.


2平方定理

素数(奇数かつ素数,すなわち 3 以上の素数)  p が 4 で割ると 1 余るとき, p は 2 つの平方数の和として表される.

2平方定理については,詳しくは上のリンク先に記事がありますので,そちらをどうぞ.



以下が素数に関するオイラーの定理です.オイラーの名前が残っている数多くの定理のうちの一つです.


定理.

素数  p について,

\begin{align*}
p\equiv 1 \pmod{4}
\end{align*}

\begin{align*}
x^2\equiv -1\pmod{p}
\end{align*}

が解を持つことは同値.

 

証明には,ウィルソンの定理フェルマーの小定理など,合同式についての有名な定理を用います.

 

証明.

まず,奇素数  p に対して, q=(p-1)/2 とおくと, q自然数であって  p=2q+1 となります.

 

[1] ( \Rightarrow) の証明

 p\equiv 1\pmod{4} より, q は偶数となるので,

\begin{align*}
(p-1)! &= \prod_{k=1}^{p-1} k\\
&= \left(\prod_{k=1}^qk\right)\left(\prod_{k=q+1}^{p-1}k\right)\\
&=  \left(\prod_{k=1}^qk\right)\left\{\prod_{k=1}^{p-q-1}(q+k)\right\}\\
&\equiv  \left(\prod_{k=1}^qk\right)\left\{\prod_{k=1}^{p-q-1}(q+k-p)\right\}\\
&\equiv \left(\prod_{k=1}^qk\right)\left\{\prod_{k=1}^q(k-q-1)\right\}\\
&\equiv \left(\prod_{k=1}^qk\right)\left\{\prod_{k=1}^q(-k)\right\}\\
&\equiv q!\times q!\times(-1)^q\\
&\equiv (q!)^2 \pmod{p}.
\end{align*}

 

一方で,ウィルソンの定理より  (p-1)!\equiv -1 なので, (q!)^2\equiv -1 となります.

 

[2] ( \Leftarrow) の証明

 x^2\equiv -1\pmod{p} の解を  x = x_1 とします.

まず, x_1 p が互いに素であることを示します.

 x_1, p の最大公約数を  M として, x_1=M\alpha, p=M\beta とします.

ある整数  k が存在して

\begin{align*}
x_1^2=-1+kp
\end{align*}

が成り立つので,代入,変形すると

\begin{align*}
M\alpha^2-k\beta=-\frac{1}{M}
\end{align*}

となり,左辺は整数なので,右辺も整数となることから  M=1.

よって, x_1, p は互いに素.

 

ここで,

\begin{align}
x_1^{p-1} &= x_1^{2q}\nonumber\\
&= (x_1^2)^q\nonumber\\
&\equiv (-1)^q\pmod{p}\tag{$\ast_1$}
\end{align}

また, x_1, p が互いに素なので,フェルマーの小定理 を用いて

\begin{align}
x_1^{p-1}\equiv 1\pmod{p}\tag{$\ast_2$}
\end{align}

なので,( \ast_1), ( \ast_2) から

\begin{align*}
(-1)^q\equiv 1\pmod{p}
\end{align*}

 p\geq 3 であるから,この式が成り立つとき, q は偶数.

よって, p=2q+1 は 4 で割ると 1 余る.