定理
正の数 の相加平均 , 相乗平均 , 調和平均 を次のように定義する.
このとき, 次の不等式が成り立つ.
等号成立は のときのみ.
ただし, (積を表す)とする.
この不等式を証明する問題は2005年の徳島大学入試で誘導無しで出ています.
←実際は誘導付きの問題として出題されていました. その問題と証明についてはこちら.
の場合については簡単に証明できるので, 高校でも習いますが, が 3 以上の証明は複雑になります.
証明
この不等式の証明方法はたくさんありますが, ここでは次の2通りを紹介します.- 対数関数を用いる方法.
- が2の累乗で表される場合を帰納的に示して, それ結果を利用してそれ以外の場合を示す方法.
1. の方法はシンプルですが, この方法は簡単には思いつけないでしょう.
2. の方法は少しややこしいですが, こちらの証明の方が自然な感じがします.
証明Ⅰ. 対数関数を用いる方法
まず, 上のグラフからも分かるように, 正の \(x\) に対して
(i):
が成り立つ. 等号は で成立する.
(グラフは縦が 軸, 横が 軸で, ピンクの線が , 緑が .)
相加平均と相乗平均の定義からM, Gは正であって, は正. よって, 不等式(i)の の部分にこれを代入して,
について和をとって,
和の部分を計算すると
相加平均と相乗平均の定義を用いて
よって, より
.
等号成立は より のとき.
また, 相乗平均と調和平均の間の不等号については, について(相加平均)≧(相乗平均)を考えることで導かれます.
証明Ⅱ. nが2の累乗で表される場合を帰納的に示して, それ結果を利用してそれ以外の場合を示す方法.
この証明は1. の証明に比べてややこしく, 長くなります. の場合の のみ示します.(i) : と表せるとき ( は自然数)
[1] : のときより, .
[2] : のとき成り立つと仮定する.
仮定:
のときを考えると,
\begin{align}
\frac{1}{2^{i+1}}\sum_{k=1}^{2^{i+1}}a_k &= \displaystyle\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2^i}\sum_{k=1}^{2^i} a_k+\frac{1}{2^i}\sum_{k=1}^{2^i}a_{k+2^i}\right) \\
&\geqq \left\{\left(\frac{1}{2^i}\sum_{k=1}^{2^i}a_k\right)\left(\frac{1}{2^i}\sum_{k=1}^{2^i}a_{k+2^i}\right)\right\}^{\frac{1}{2}}\\
&\geqq \left\{\left(\prod_{k=1}^{2^i}a_k\right)^{\frac{1}{2^i}}\left(\prod_{k=1}^{2^i}a_{k+2^i}\right)^{\frac{1}{2^i}}\right\}^{\frac{1}{2}} \\
&= \left(\prod_{k=1}^{2^{i+1}}a_k\right)^{\frac{1}{2^{i+1}}}
\end{align}
となり不等式が成立.
(ii) : と表せないとき
となる に対して, 新しく数 を導入します.
(i)の結果から,
この左辺は で, 両辺 乗して,
両辺 で割って
.