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3つの平均(相加平均,相乗平均,調和平均)


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3つの平均(相加平均,相乗平均,調和平均)

一般的に,小学校で習う「平均」は相加平均(算術平均)と呼ばれるものですが,平均には他にもいろいろな種類があり,高校で習う相乗平均(幾何平均),そして高校で習いませんが調和平均というものがあります.

定義.  a_1, a_2, \ldots a_nを正の数とするとき,相加平均 M,相乗平均 G,調和平均 Hはそれぞれ次のように定義されます.

 \begin{align}
M &= \frac{a_1+a_2+\cdots+a_n}{n}\\
G &= \sqrt[n]{a_1a_2\ldots a_n}\\
H &= \frac{n}{\frac{1}{a_1}+\frac{1}{a_2}+\cdots+\frac{1}{a_n}}
\end{align}

 

2. 定理( (相加平均)≧(相乗平均)≧(調和平均) )

定理.  a_1, a_2, \ldots, a_n\geqq0の相加平均, 相乗平均, 調和平均をそれぞれ  M, G, H とすると, 不等式


M\geqq G\geqq H

が成り立つ. 等号成立は a_1=a_2=\cdots=a_n\ のときのみ.       (証明はこちら)

 

(相加平均)≧(相乗平均) の関係は不等式の証明でよく使います.

 

 a_1+a_2+\cdots+a_n\geqq n\cdot\sqrt[n]{a_1a_2\ldots a_n} の形で使うことの方が多いかもしれません. 特に  n=2 の場合の形

 a_1+a_2 \geqq 2\sqrt{a_1+a_2}

は大切です.

また,  nが3以上の場合についても, 関数の最小値を求めるのに使える場合があるので, 覚えておくと便利です. (こちらを参照)

 

3. 調和平均とは

相加平均, 相乗平均に比べると, 調和平均は有名ではないですが, 以下のような身近なところに使われています.

問. 10kmの距離を行きは時速3km, 帰りは時速5kmで往復したとき, 行きと帰りを合わせた平均の速さは時速何kmか.

答. 往復に掛かった時間は  \frac{10}{3}+\frac{10}{5}=\frac{16}{3} 時間なので,

平均の速さは時速  20/\frac{16}{3}=3.75 km.

 

この場合, 距離(この問題では10kmですが)にかかわらず, 平均の時速は, 行きと帰りの時速3kmと時速5kmの調和平均になります.

また, 電気回路において並列接続された抵抗器の合成抵抗も調和平均によって求められます.

 

4. その他の平均に関する話題

一般化平均

上で紹介した3種類の平均は, さらに一般化して同じ形で書くことができます.

 \displaystyle \mu_m=\sqrt[m]{\frac{1}{n} \sum_{k=1}^{n} a_k^m}

を一般化平均といい, 相加平均M, 相乗平均G, 調和平均Hはそれぞれ

 \begin{align}
M&=\mu_1\\\
G&=\mu_0=\lim _ {m\to0}\mu_m\\\
H&=\mu_{-1}
\end{align}

と表されます.