問題.
条件: をみたす のうち, かつ が成立するような の値はただ 1 つである.
今年の確率の問題は,京大でよく出題される漸化式の問題ではありませんでした.
とくにひねった部分もないので,条件をみたす目の出方を考えて解いていきましょう.
解答例.
さいころを 1 回投げたとき,2 つの事象 A, B をA : 1, 2, 3, 4 のいずれかの目が出る
B : 5, 6 のいずれかの目が出る
とします.
このとき,
A が起こる確率は .
B が起こる確率は .
条件をみたすのは, 回で起こる事象が
\begin{align*}
\overbrace{\underbrace{A, A, \ldots, A}_{i 回}, \underbrace{B, B, \ldots, B}_{j回}, \underbrace{A, A, \ldots, A}_{n-i-j回}}^{n回}
\end{align*}
() となるとき.
と仮定してあるので, でも構わないのです.
上の状態 (A が 回,B が 回,A が 回)が起こる確率は
\begin{align*}
\left(\dfrac{2}{3}\right)^i \cdot\left(\dfrac{1}{3}\right)^j \cdot\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-i-j} &= \dfrac{2^{n-j}}{3^n}.
\end{align*}
あとは, をみたす について足し合わせれば,求める確率は
\begin{align*}
\sum_{\substack{i\geqq 0, j\geqq 1\\ i+j\leqq n}} \dfrac{2^{n-j}}{3^n} &= \sum_{i=0}^{n-1}\sum_{j=1}^{n-i} \dfrac{2^{n-j}}{3^n}\\
&= \sum_{i=0}^{n-1} \dfrac{2^{n-1}}{3^n}\cdot \dfrac{1-\left(\frac{1}{2}\right)^{n-i}}{1-\frac{1}{2}}\\
&= \sum_{i=0}^{n-1} \dfrac{2^n}{3^n}\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-i}\right\}\\
&= \sum_{i=0}^{n-1} \left(\dfrac{2^n}{3^n}-\dfrac{2^i}{3^n}\right)\\
&= n\cdot\dfrac{2^n}{3^n}-\dfrac{1}{3^n}\cdot \dfrac{1-2^n}{1-2}\\
&= \dfrac{(n-1)2^n+1}{3^n}.
\end{align*}
和をとる部分について
最後の和をとる部分について,上ではまず について足し合わせて,その後 について足す,という順番で計算していますが,もちろん,先に について足して計算することもできます.
その場合, は に依存していないので,
\begin{align*}
\sum_{\substack{i\geqq 0, j\geqq 1\\ i+j\leqq n}} \dfrac{2^{n-j}}{3^n} &= \sum_{j=1}^n\sum_{i=0}^{n-j} \dfrac{2^{n-j}}{3^n}\\
&= \sum_{j=1}^n \dfrac{2^{n-j}}{3^n}(n-j+1)
\end{align*}
となり, についての和の計算が,( の一次式× 2 の乗) のような形の和となり,少し面倒になります.
そこで, についての和を先に計算することで,等比数列の和の公式だけで解くことができています.