数学の力

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京大 2019 年度理系第 4 問


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問題.

1 つのさいころ n 回続けて投げ,出た目を順に  X_1, X_2, \ldots, X_n とする.このとき次の条件をみたす確率を  n を用いて表せ.ただし  X_0=0 としておく.

条件: 1\leqq k\leqq n をみたす  k のうち, X_{k-1}\leqq 4 かつ  X_k\geqq 5 が成立するような  k の値はただ 1 つである.

今年の確率の問題は,京大でよく出題される漸化式の問題ではありませんでした.
とくにひねった部分もないので,条件をみたす目の出方を考えて解いていきましょう.



解答例.

さいころを 1 回投げたとき,2 つの事象 A, B を

A : 1, 2, 3, 4 のいずれかの目が出る

B : 5, 6 のいずれかの目が出る

とします.

このとき,

A が起こる確率は  \dfrac{4}{6} = \dfrac{2}{3}.

B が起こる確率は  \dfrac{2}{6} = \dfrac{1}{3}.

条件をみたすのは, n 回で起こる事象が

\begin{align*}
\overbrace{\underbrace{A, A, \ldots, A}_{i 回}, \underbrace{B, B, \ldots, B}_{j回}, \underbrace{A, A, \ldots, A}_{n-i-j回}}^{n回}
\end{align*}

( i\geqq 0, j\geqq 1, i+j\leqq n\quad\quad(\ast)) となるとき.

 X_0=0 と仮定してあるので, i=0 でも構わないのです.

上の状態 (A が  i 回,B が  j 回,A が  n-i-j 回)が起こる確率は

\begin{align*}
\left(\dfrac{2}{3}\right)^i \cdot\left(\dfrac{1}{3}\right)^j \cdot\left(\dfrac{2}{3}\right)^{n-i-j} &= \dfrac{2^{n-j}}{3^n}.
\end{align*}

あとは, (\ast) をみたす  i, j について足し合わせれば,求める確率は

\begin{align*}
\sum_{\substack{i\geqq 0,  j\geqq 1\\ i+j\leqq n}} \dfrac{2^{n-j}}{3^n} &= \sum_{i=0}^{n-1}\sum_{j=1}^{n-i} \dfrac{2^{n-j}}{3^n}\\
&= \sum_{i=0}^{n-1} \dfrac{2^{n-1}}{3^n}\cdot \dfrac{1-\left(\frac{1}{2}\right)^{n-i}}{1-\frac{1}{2}}\\
&= \sum_{i=0}^{n-1} \dfrac{2^n}{3^n}\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-i}\right\}\\
&= \sum_{i=0}^{n-1} \left(\dfrac{2^n}{3^n}-\dfrac{2^i}{3^n}\right)\\
&= n\cdot\dfrac{2^n}{3^n}-\dfrac{1}{3^n}\cdot \dfrac{1-2^n}{1-2}\\
&= \dfrac{(n-1)2^n+1}{3^n}.
\end{align*}



和をとる部分について


最後の和をとる部分について,上ではまず  j について足し合わせて,その後  i について足す,という順番で計算していますが,もちろん,先に  i について足して計算することもできます.

その場合, \dfrac{2^{n-j}}{3^n} i に依存していないので,

\begin{align*}
\sum_{\substack{i\geqq 0,  j\geqq 1\\ i+j\leqq n}} \dfrac{2^{n-j}}{3^n} &= \sum_{j=1}^n\sum_{i=0}^{n-j} \dfrac{2^{n-j}}{3^n}\\
&= \sum_{j=1}^n \dfrac{2^{n-j}}{3^n}(n-j+1)
\end{align*}

となり, j についての和の計算が,( j の一次式× 2 の j乗) のような形の和となり,少し面倒になります.

そこで, j についての和を先に計算することで,等比数列の和の公式だけで解くことができています.