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フェルマー数に関する定理


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フェルマー数に関する定理

フェルマーの最終定理フェルマーの小定理にも名前を残している数学者, フェルマーの名前がついた数, フェルマー数というものがあります. ここでは, フェルマー数の定理で重要なものの一つを紹介します.

 

フェルマー数とは

フェルマーとは, 自然数  n に対して,

\begin{align*}
F_n = 2^{2^n}+1
\end{align*}

と表される数です.

 

具体的に計算すると,

\begin{align*}
F_1 &= 2^{2^1}+1 = 5\\
F_2 &= 2^{2^2}+1 = 17\\
F_3 &= 2^{2^3}+1 = 257\\
&\vdots&
\end{align*}

と 小さい nに対しても  F_n はどんどん大きな数になっていきます.

 

フェルマーはこの  F_n がすべて素数であると予想したのですが, 実際には

 F_5 = 641 \times 6700417

という反例をオイラーが見つけました.

 

一方, 後に「 p:素数として, 正 p角形がコンパスと定規のみで作図可能であるのは,  pフェルマー数のときのみ」ということがガウスにより証明されました.

 

定理

ここでは, フェルマー数に関する定理を紹介します.

 

定理. 

フェルマー F_n素数  p を約数にもつとき,

\begin{align*}
p\equiv 1 \pmod{2^{n+1}}
\end{align*}

が成り立つ.

(合同式に関してはこちら. )

 

ここでは,  F_n 自身が素数  p になっている場合も含めて考えてかまいません.

 

定理の証明の前に, まず補題を証明します.

 

補題1.

補題

自然数  a, m に対して,  a^k\equiv 1 \pmod{m} を満たす最小の自然数  k を, 法  mに関する  a位数と呼び,  e と表記することにする.

このとき,

自然数  k a^k\equiv 1 \pmod{m} を満たす

 k は位数  e を約数にもつ.

(証明)
・(⇒)

自然数  k a^k\equiv 1\pmod{m} を満たすとき, 位数  e の定義により,

\begin{align*}
k \geqq e
\end{align*}

 k e で割った商を  s, 余りを  t とおくと,  ( s, tは整数で  s\geqq 1, 0\leqq t\leqq e)

\begin{align*}
k = se + t
\end{align*}

 

(以下では合同式の法はすべて  m とします. )

 

 a^k\equiv 1 より,  a^{se+t}\equiv 1.

\begin{align}
\therefore (a^e)^s\cdot a^t\equiv 1
\end{align}

 

一方,  a^e\equiv 1 を用いると

\begin{align}
(a^e)^s\cdot a^t &\equiv 1^s\cdot a^t\\
&\equiv a^t
\end{align}

 

(1), (2) より,  a^t\equiv 1.

ここで  t\neq 0 とすると,  t自然数で [tex: t定理の証明.

・証明の流れ
  1.  p に関する 2 の位数  e 2^{n+1} の約数であることを示す.
  2.  e=2^{n+1}背理法で示す. (背理法の中で帰納法を使う)
  3. フェルマーの小定理を利用して定理を導く.
・証明
 F_n = 2^{2^n}+1 p の倍数より,

\begin{align*}
2^{2^n}+1\equiv 1\pmod{p}
\end{align*}

(以下では, 合同式の法が  p のときは表記を省略します. )

 

ここから式変形して,

\begin{align*}
(\ast)\,\,\,\,2^{2^n}&\equiv -1\\
\left(2^{2^n}\right)^2 &\equiv (-1)^2\\
\therefore 2^{2^{n+1}} &\equiv 1
\end{align*}

 

 p に関する  2 の位数を  e とすると, (補題1) により,

 2^{n+1} e を約数にもつので,

 e 2^0, 2^1, \ldots, 2^{n+1} のいずれかになります.

 

そこで, 背理法を使って,  e = 2^{n+1} であることを示していきます.

 

 e = 2^i, ( i自然数 0\leqq e\leqq n) と仮定します. (つまり,  e 2^{n+1} でないと仮定します. )

つまり,

\begin{align*}
2^{2^{i}}\equiv 1
\end{align*}

 

このとき,

 j\geqq i を満たす自然数  j について  2^{2^j}\equiv 1 が成り立つ」

ことを帰納法で示します.

 

[1]  j=i のときは明らか.

[2]  j=k で成り立つと仮定すると,

\begin{align*}
2^{2^k}\equiv 1
\end{align*}

 j = k+1 のとき,

\begin{align*}
2^{2^{k+1}} &= 2^{2^k\cdot 2}\\
&= (2^{2^k})^2\\
&\equiv 1^2\\
&\equiv 1
\end{align*}

より成り立つ.

[1], [2] より,  j\geqq i\Rightarrow 2^{2^j}\equiv 1.

 

ここで,  n\geqq i の仮定から,  2^{2^n}\equiv 1.

 

一方で,

はじめに出て来た式  (\ast)

\begin{align*}
(\ast)\,\,\,\,2^{2^n}\equiv -1
\end{align*}

 

なので,

\begin{align*}
1\equiv -1 \pmod{p}
\end{align*}

 

ところが,  p素数で,  F_n = 2^{2^n}+1 (奇数) の約数より  p は奇数なので, 上の式を満たさない. よって, 矛盾が生じたので, 背理法の仮定が誤りで, 位数  e

\begin{align*}
e = 2^{2^{n+1}}
\end{align*}

 

ここで, Fermat の小定理より

\begin{align*}
2^{p-1} \equiv 1
\end{align*}

が成り立ち, (補題)により,  p-1 e の倍数.

つまり,

\begin{align*}
p-1 &\equiv 0 \pmod{e}\\
\therefore p&\equiv 1 \pmod{2^{n+1}}
\end{align*}