数学の力

京大生が数学の定理・公式の証明や入試問題の解説をするブログ.

京大2021年度理系第1問-問2(確率)

問題.

ーーー→ 2021年度京大理系の他の問題はこちらから
第1問-問1        第2問       第3問       第4問       第5問       第6問



次の各問に答えよ.
問1.  xyz 空間の3点 \mathrm{A}(1, 0, 0), \mathrm{B}(0, -1, 0), \mathrm{C}(0, 0, 2)を通る平面 \alphaに関して点 \mathrm{P}(1, 1, 1)と対称な点 \mathrm{Q}の座標を求めよ.ただし,点 \mathrm{Q}が平面 \alphaに関して \mathrm{P}と対称であるとは,線分 \mathrm{PQ}の中点 \mathrm{M}が平面 \alpha上にあり,直線 \mathrm{PM} \mathrm{P}から平面 \alphaに下ろした垂線となることである.
問2. 赤玉,白玉,青玉,黄玉が1個ずつ入った袋がある.よくかきまぜた後に袋から玉を1個取り出し,その玉の色を記録してから袋に戻す.この試行を繰り返すとき, n 回目の試行で初めて赤玉が取り出されて4種類全ての色が記録済みとなる確率を求めよ.ただし, n は4以上の整数とする.


本記事では問2.の解説をします.問1についてはこちらの記事で解説しています(京大2021年度理系第1問-問1(ベクトル)).

4色の玉が入った袋から玉を取り出して, n回目で赤が出てすべての色が少なくとも1回以上出た状態になる確率です.ちなみに,全ての色が記録済みになるまでに必要な試行回数の期待値も求めてみると面白いです(本記事の最後で説明します).



解説.

まず,1回の試行で取り出される玉は4通りあるので, n回試行を行うと全部で 4^n通りの玉の出方があります.

次に,問題の条件に合う玉の出方を考えます.「 n-1回目までの試行で赤は一度も出ず,白,青,黄が少なくとも1回ずつ出る」のが何通りあるかを考えます.

赤が1度も出ないのは 3^{n-1}通り.

そのうち,白,青,黄のうち1色が n-1回出るとき,各色について1通りなので 3\times 1 = 3通り.

白,青,黄のうち2色しか出ず,1色が1度も出ないとき,出る色の組み合わせが {}_3C_2=3通りで,各色の組み合わせに対して 2^{n-1}-2通り(*)なので, 3(2^{n-1}-2)通り.

(*)について:例えば白と青のとき,2色のいずれかで n-1回なので 2^{n-1}ですが,このうち2通りはどちらか1色のみなので,2通り引いておく必要があります.

よって,問題の条件に合う玉の取り出し方は

\begin{align*}
3^{n-1} - 3 - 3(2^{n-1}-2) &= 3^{n-1}-3\cdot2^{n-1}+3
\end{align*}

通り.したがって,求める確率は

\begin{align*}
\frac{3^{n-1}-3\cdot2^{n-1}+3}{4^n}.
\end{align*}

おまけ(期待値の話)

今回の問題設定で(最後に出る色を赤に固定せず何色でもいいことにして),4色全ての玉が少なくとも1回取り出されるまでの試行回数の期待値を考えてみます.

 n回目の試行で4色目の玉が初めて取り出される確率 P_nは,その玉の色が4通りなので

\begin{align*}
P_n &= 4\times \frac{3^{n-1}-3\cdot2^{n-1}+3}{4^n}\\
&= \left(\frac{3}{4}\right)^{n-1}-3\cdot\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}+3\cdot\left(\frac{1}{4}\right)^{n-1}
\end{align*}

期待値を Eとすると,

\begin{align*}
E &= \sum_{n=4}^\infty n\cdot P_n
\end{align*}

ですが,定数 p(0\leq p\leq 1)に対して

\begin{align*}
f(p) &= \sum_{n=4}^\infty n\cdot p^{n-1}
\end{align*}

とおくと

\begin{align*}
E &= f\left(\frac{3}{4}\right) - 3f\left(\frac{1}{2}\right)+3f\left(\frac{1}{4}\right)
\end{align*}

と書けます. f(p)については pf(p)-f(p)を計算すれば

\begin{align*}
f(p) &= \frac{p^3(4-3p)}{(1-p)^2}
\end{align*}

となります.よって,期待値は

\begin{align*}
E &= \frac{189}{16} - 3\times\frac{5}{4} + 3\times\frac{13}{144}\\
&= \frac{25}{3}
\end{align*}

となります.つまり,大体8回位試行を繰り返せば4色とも出るということになります.

 

ちなみに,一般に N色の場合の期待値は

\begin{align*}
N\sum_{n=1}^{N}\frac{1}{n}
\end{align*}

になることが知られています.これは今回と同様の方法で導出するのは難しいので別の方法を用いる必要があります.また気が向いたらこれについても記事を書こうと思います.

京大2021年度理系第1問-問1(ベクトル)

問題.

ーーー→ 2021年度京大理系の他の問題はこちらから
第1問-問2        第2問       第3問       第4問       第5問       第6問




次の各問に答えよ.
問1.  xyz 空間の3点 \mathrm{A}(1, 0, 0), \mathrm{B}(0, -1, 0), \mathrm{C}(0, 0, 2)を通る平面 \alphaに関して点 \mathrm{P}(1, 1, 1)と対称な点 \mathrm{Q}の座標を求めよ.ただし,点 \mathrm{Q}が平面 \alphaに関して \mathrm{P}と対称であるとは,線分 \mathrm{PQ}の中点 \mathrm{M}が平面 \alpha上にあり,直線 \mathrm{PM} \mathrm{P}から平面 \alphaに下ろした垂線となることである.問2. 赤玉,白玉,青玉,黄玉が1個ずつ入った袋がある.よくかきまぜた後に袋から玉を1個取り出し,その玉の色を記録してから袋に戻す.この試行を繰り返すとき, n回目の試行で初めて赤玉が取り出されて4種類全ての色が記録済みとなる確率を求めよ.
 

長くなってしまうので,問1と問2は別の記事に分けて書くことにして,本記事では問1の解説をします.(問2の記事はこちら)

問1. は xy 平面だとよくある問題ですが,空間なのでベクトルを使って垂直という条件を処理しましょう,という問題です.ベクトルの基本がわかっていればそこまで難しくない印象です.

 

 

解答例.

問1.

 \newcommand\vec[1]{\overrightarrow{\mathrm{#1}}}\mathrm{PQ}の中点 \mathrm{M}が平面 \alpha上にあること

 \mathrm{PQ}(\mathrm{PM})が平面 \alphaに垂直であること

の2つから式を立てて解けばいいです.今回の場合,①からさきに扱うと解きやすいです.

まず,点 \mathrm{M} \mathrm{A}, \mathrm{B}, \mathrm{C}を通る平面上にあるので,実数 s, tを用いて

\begin{align*}
\vec{AM}=s\vec{AB}+t\vec{AC}
\end{align*}

と書けます.原点を \mathrm{O}(0, 0, 0)とすると, \vec{AM}=\vec{OM}-\vec{OA}なので,

\begin{align*}
\vec{OM} &= \vec{OA}+s\vec{AB}+t\vec{AC}\\
&= (1, 0, 0) + s(0-1, -1-0, 0-0) + t(0-1, 0-0, 2-0)\\
&= (-s-t+1, -s, 2t)
\end{align*}

次に,②の条件を考えます.

\begin{align*}
\vec{PM} &= \vec{OM} - \vec{OP}\\
&= (-s-t+1, -s, 2t) - (1, 1, 1)\\
&= (-s-t, -s-1, 2t-1).\tag{1}
\end{align*}

 \vec{PM}\perp\vec{AB}より \vec{PM}\cdot\vec{AB}=0なので

\begin{align*}
(-s-t)\cdot(-1)+(-s-1)\cdot(-1)+(2t-1)\cdot0 &= 0\\
\therefore 2s+t+1 &= 0 \tag{2}
\end{align*}

同様に,

 \vec{PM}\perp\vec{AC}より \vec{PM}\cdot\vec{AC}=0なので

\begin{align*}
(-s-t)\cdot(-1)+(-s-1)\cdot0+(2t-1)\cdot2 &= 0\\
\therefore s+5t-2 &= 0 \tag{3}
\end{align*}

(2), (3)を連立して解けば, s = -\frac{7}{9}, t = \frac{5}{9}.

(1)に代入して,

\begin{align*}
\vec{PM} &= \left(\frac{2}{9}, -\frac{2}{9}, \frac{1}{9}\right)
\end{align*}

したがって,

\begin{align*}
\vec{OQ} &= \vec{OP} + 2\vec{PM}\\
&= (1, 1, 1) + 2\left(\frac{2}{9}, -\frac{2}{9}, \frac{1}{9}\right)\\
&= \left(\frac{13}{9}, \frac{5}{9}, \frac{11}{9}\right)
\end{align*}

となり,点 \mathrm{Q}の座標は \left(\frac{13}{9}, \frac{5}{9}, \frac{11}{9}\right).