数学の力

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三角関数の角度に関する公式について


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三角関数の角度に関する公式について

ここでは, 以下のような公式について説明します.

 \sin(-\theta)=-\sin\theta,  \cos(-\theta)=\cos\theta

 \tan(-\theta)=-\tan\theta

 \sin\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=\cos\theta, \cos\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=\sin\theta

 \tan\left(\frac{\pi}{2}-\theta\right)=\frac{1}{\tan\theta}

 \sin(\pi-\theta)=\sin\theta, \cos(\pi-\theta)=-\cos\theta

 \tan(\pi-\theta)=-\tan\theta                   など.

数学の教科書には, このようなタイプの公式がたくさん出てきます. もちろん可能であればすべて覚えてもいいですし, 毎回加法定理に当てはめて導くこともできます.

ですが, 角度のずれの部分は  \displaystyle \frac{\pi}{2}, \pi, \frac{3}{2}\pi, -\pi などたくさん考えられるので, すべて丸暗記する方法では混ざってしまって間違いやすくなります.  僕自身, これらの公式はほとんど覚えていません.

そこで, もっと簡単にこの公式をつくれる方法を紹介します. この方法ならその場その場で公式をつくれるので迷うことはありません.

 

 y=\sin{x}, y=\cos{x}のグラフ

まず,  y=\sin{x},  y=\cos{x} のグラフの形を頭に入れておきましょう. どちらも周期が  2\pi の周期関数になっていて,  y=\sin{x} のグラフを  x 軸の負の方向(左側)に  \displaystyle \frac{\pi}{2} ずらすと  y=\cos{x} のグラフと重なることに注意してください. (このことは  \sin\left(\frac{\pi}{2}+\theta\right)=\cos\theta であることを表しています. )

sinx
y=\sin x のグラフ

cosx
y=\cos x のグラフ

公式の導き方

ここでは, 例を用いて公式の導き方を説明します.

 \sin(\pi-\theta) について考えます.

 \sin(\pi-\theta) の点を  y=\sin{x} のグラフ上で  x=\pi-\theta として考えると,  x=\pi である点を起点として左に向かって  \theta の点です. サインカーブ y=0 であるふもとから左に向かって  \theta だけ登っていくイメージです. その形が分かったら, 同じ形を  y=\sin{x} または  y=\cos{x} のグラフの原点を起点として右へ移動する形から探します. すると,  y=\sin{x} のグラフの  x=0 の点から右に  \theta 移動していくと同じ形であることが分かります. つまり,  \sin(\pi-\theta)=\sin\theta となります. sin_2

 \sin(-\theta) のようにふもとからさらに下る形の場合はマイナスをつけて  -\sin{\theta} のようになります. このように, グラフ上で同じ形の部分を探すだけで公式を導くことができます. また,  \tan については,  \displaystyle \tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta} を用いて, 例えば  \displaystyle \tan(\pi-\theta)=\frac{\sin(\pi-\theta)}{\cos(\pi-\theta)}=\frac{\sin\theta}{-\cos\theta}=-\tan\theta のように簡単に求まります.

 

例題

以下の式を  \sin\theta,  \cos\theta で表してください.

(1)  \sin\left(\frac{3}{2}\pi+\theta\right)

(2)  \cos(\pi+\theta)

(3)  cos\left(\frac{\pi}{2}+\theta\right)

解答.
ここでは図は省略して答えだけとしますが, 図を描いて考えてください.

(1)  \sin\left(\frac{3}{2}\pi+\theta\right) = -\cos\theta

(2)  \cos(\pi+\theta) = -\cos\theta

(3)  \cos\left(\frac{\pi}{2}+\theta\right) = -\sin\theta