数学の力

京大生が数学の定理・公式の証明や入試問題の解説をするブログ.

東京農大1994年度(方程式)


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問題.

実数  a, b, c が,  3 つの等式
a+b+c=1, a^2+b^2+c^2=1, a^3+b^3+c^3=1
を同時に満たすとき, 任意の正の整数  n に対して,  a^n+b^n+c^n=1が成立することを証明せよ.
大学入試で「すべての  n について~が成り立つ」ことを示す場合, 数学的帰納法を使うことがほとんどですが, この問題では帰納法を使おうとした場合まったく手が付けられなくなります.

 

実は, 与えられた式をみたす  a, b, c の値は1通りに求まってしまう, という意外な問題です.

 a^3+b^3+c^3=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc の変形を知っているかどうか, 3次方程式の解と係数の関係を分かっているか, がカギになってきます.

 

解答例.

まず, 与えられた式から  a, b, c の基本対称式である  a+b+c, ab+bc+ca, abc の値を求めます.

 

 a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)=1 a+b+c=1を代入すれば,

 1^2-2(ab+bc+ca)=1 より,

 ab+bc+ca=0

となります.

また,

 a^3+b^3+c^3=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc=1

 a+b+c=1, a^2+b^2+c^2=1, ab+bc+ca=0 を代入すれば,

 1\cdot (1-0)+3abc=1 より,

 abc=0.

以上から,

\begin{align*}
\left\{\begin{array}{ll}
a+b+c=1\\
ab+bc+ca=0\\
abc=0\end{array}
\right.
\end{align*}

 

よって, 3次方程式の解と係数の関係から,  a, b, c は方程式

x^3-x^2=0

の3つの解であることが分かります. この方程式は簡単に解けて, 因数分解すると

x^2(x-1)=0

より,  a, b, c 0, 0, 1 (順番は入れ替わってもよい) とわかる.

つまり, 正の整数  n に対して,

\begin{align*}
a^n+b^n+c^n &= 0^n+0^n+1^n\\
&= 0+0+1\\
&= 1
\end{align*}