数学の力

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2008年度東大理系第5問


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問題.

自然数  n に対し,  \frac{10^n-1}{9}=\overbrace{111\cdots111}^{n個} \fbox{$n$} で表す.
たとえば,  \fbox{$1$}=1, \fbox{$2$}=11, \fbox{$3$}=111 である.
(1)  m を 0 以上の整数とする.  \fbox{$3^m$ } 3^m で割り切れるが,  3^{m+1} では割り切れないことを示せ.
(2)  n が 27 で割り切れることが,  \fbox{$n$} が 27 で割り切れるための必要十分条件であることを示せ.


方針.

(1) について

 \fbox{$3^m$} は 1 が  3^m 個並んだ数で,  \fbox{$3^{m+1}$} は 1 が  3^{m+1}=3\cdot 3^m 個並んだ数なので,  \fbox{$3^m$} が 3 個並んだ数とみなすこともできます. このことに気がつけば,  m についての帰納法で証明できそうであると分かります.

 

(2) について

こちらは (1) と比べて難しいですが, まず最初に  n が 9 で割り切れることが,  \fbox{$n$} が 9 で割り切れるための必要十分条件であることをいいます. それを利用して証明していきます.

 

 

解答例.

(1) 帰納法を利用します.

[1]  m=0 のとき

 \fbox{$3^0$}=1 で, これは  3^0=1 で割り切れますが,  3^1=3 では割り切れません.

よって,  m=1 のときは成立.

 

[2]  m=k のとき成り立っていると仮定します.

つまり,  \fbox{$3^k$} 3^k では割り切れるが,  3^{k+1} では割り切れないと仮定します.

すると,  \fbox{$3^k$}=3^kp, (但し  p は 3 で割り切れない自然数) と書けます.

このとき,


\begin{align*}
\fbox{$3^{k+1}$} &=  \frac{10^{3^{k+1}}-1}{9}\\
&=  \frac{(10^{3^k})^3-1}{9}\\
&=  \frac{10^{3^k}-1}{9}\{(10^{3^k})^2+10^{3^k}+1\}\\
&=  \fbox{$3^k$}\{(10^{3^k})^2+10^{3^k}+1\}\\
&=  3^kp\{(10^{3^k})^2+10^{3^k}+1\} \tag{$\ast$}
\end{align*}


ここで,  \{(10^{3^k})^2+10^{3^k}+1\} について,
一般に  n自然数としたとき  10^n は 9 で割ると 1 余ります.
( 10^n=9\fbox{$n$}+1からも分かると思います).

 

すると,  \{(10^{3^k})^2+10^{3^k}+1\} を 9 で割ると余りが  1^2+1+1=3 になります.
9 で割って余りが 3 なので, 3 では割り切れるが, 9 では割り切れない, ともいえます.

 

よって, ( \ast) の右辺は 3 で  k+1 回割り切れるが  k+2 回は割り切れないことがわかります.
つまり,  m=k+1 のときも成立です.

 

以上[1], [2] より すべての非負整数  m について,  \fbox{$3^m$} 3^m で割り切れるが,  3^{m+1} では割り切れないことが示されました.

 

 

(2) まず,  n が 9 で割り切れることが,  \fbox{$n$} が 9 で割り切れるための必要十分条件であることを示します.

 

\begin{align*}
\fbox{$n$} &= \overbrace{111\cdots111}^{n個}\\
&= 10^{n-1}+10^{n-2}+\cdots+10+1\\
&\equiv 1^{n-1}+1^{n-2}+\cdots+1+1\\
&\equiv n \pmod{9}
\end{align*}

 

(合同式を使いましたが, ここでは 9 で割った余りが等しいことを表す記号だと思ってください. 合同式について, 詳しくはこちら).

 

すると,  \fbox{$n$} n は 9 で割った余りが一致するので,  n が 9 で割り切れることが,  \fbox{$n$} が 9 で割り切れるための必要十分条件であることが言えました.

 

今わかっていることは

 n\equiv0\pmod{9}\Leftrightarrow \fbox{$n$}\equiv0\pmod{9}

ここから,  n が 27 で割り切れる場合を考えていきます.

\begin{align*}
\fbox{$n$}\equiv0\pmod{27} &\Leftrightarrow \fbox{$n$}\equiv0\pmod{9}\,\text{かつ}\,\fbox{$n$}/9\bmod{3}=0\\
&\Leftrightarrow n\equiv0\pmod{9}\,かつ\,\fbox{$n$}/9\bmod{3}=0 \tag{$\ast_1$}
\end{align*}

 

 n が 9 で割り切れるとき,  n=9b, ( b自然数) とおくと,

\begin{align*}
\frac{\fbox{$n$}}{9} &= \frac{10^{9b}-1}{9\cdot 9}\\
&= \frac{10^9-1}{9\cdot 9}\left(10^{9(b-1)}+10^{9(b-2)}+\cdots+10^9+1\right)
\end{align*}

となり, (1) より  \frac{10^9-1}{9\cdot 9} は 3 で割り切れない自然数であるから,

 

\begin{align*}
[\ast_1] &\Leftrightarrow n\equiv0\pmod{9}\,かつ\, 10^{9(b-1)}+10^{9(b-2)}+\cdots+10^9+1\equiv0\pmod{3}\\
&\Leftrightarrow n\equiv0\pmod{9}\,かつ\, b\equiv0\pmod{3}\\
&\Leftrightarrow n\equiv0\pmod{9}\,かつ\, \frac{n}{9}\equiv0\pmod{3}\\
&\Leftrightarrow n\equiv0\pmod{27}
\end{align*}

よって,  \fbox{$n$} が 27 で割り切れることと  n が 27 で割り切れることは同値であることが示せました.

 

 

追記.

問題にはなっていませんが, 今回 (2) の証明で用いた方法を繰り返すことで, 次の命題を示すことができます.

 

 m自然数とするとき,
自然数  n 3^m で割り切れることは,  \fbox{$3^m$} で割り切れることの必要十分条件である.