数学者ラマヌジャン
インドの天才数学者で, ラマヌジャン(1887-1920)という人がいました.
彼は他の有名な数学者に比べても飛びぬけて天才だと言われています.
彼は当時の数学の知識はあまりなく, 独学で研究をしていましたが, その短い生涯の中で3254個もの公式を生み出したそうです. さらにすごいところは, その公式の殆どが証明なしに, 直感で思いついたものだということです. 例えば, 彼が発見した公式の一つに
\begin{align*}
\frac{1}{\pi} = \frac{2\sqrt{2}}{99^2}\sum_{k=0}^{\infty} \frac{(4k)!(1103+26390k)}{(4^k\cdot 99^k\cdot k!)^4}
\end{align*}
というものがありますが, このような複雑な公式を何処から思いつくのかさっぱりわかりませんね. (この公式は現在では証明されて正しいことが分かっているようです).
彼は自然数すべてが友達であったともいわれていて, そのことを示す有名な逸話として, 「タクシー数」に関する話が残っています.
タクシー数の逸話
ラマヌジャンはイギリスに渡り研究を続けていましたが, あるとき体調を崩して寝込んでいました. 彼の師匠にあたる数学者ハーディが彼の見舞いに行くときに, 前を走っていた車のナンバーが1729であるのを見て, ハーディ博士は次のように思いました.
「1729はなんと無味乾燥な数字だろう. 不吉なことがあるのかもしれない. 」
そして, その話をラマヌジャンに話したところ, ラマヌジャンは次のように答えたのです.
「そんなことはありませんよ. 1729は2つの立方数(自然数の3乗である数)の和として2通りに表すことのできる最小の自然数ですよ. 」
実際,
\begin{align*}
1729 &= 1000+729=10^3+9^3\\
1729 &= 1728+1=12^3+1^3
\end{align*}
のように2通りに表すことができます. やであることを覚えていたとすれば, 1729が立方数の和として2通りに表されることは簡単に気づくかもしれませんが, そのような性質をもつ数の中で最小であることが即座にわかるというのは頭の回転の速さが良く分かります.
この逸話から, 1729はタクシー数と呼ばれています.