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ペル方程式を利用する問題の例


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ペル方程式とは

今回の記事では, 前回書いたペル方程式を用いるの実際の問題例を説明します.

ペル方程式は以下のようなものでした.

ペル方程式 :  x^2-Dy^2=1

但し,  D自然数の定数.

また, ペル方程式は解について次のような性質がありました.

1.  x^2-Dy^2=1自然数解のうち,  x の値が最小である解を  (x_1, y_1) とおくとき, 次のように自然数  x_n, y_n ( n=2, 3, \cdots) を定めると  (x_n, y_n) もまた方程式の解である

x_n+y_n\sqrt{D}=(x_1+y_1\sqrt{D})^n

2. ペル方程式の解はすべて1. によって得られる

詳しくは前の記事「ペル方程式とは」を見てください.

ペル方程式を用いる問題の例

ペル方程式とその解き方の例は前回の記事で説明したので, 実際の問題の例を解いてみます.

問題. Aさんは毎日折り紙で鶴を折るのですが, 1日目には1つ, 2日目には2つ, 3日目には3つ, そして n日目には  n 個折るものとします. 折った鶴は前日までに折ったものと合わせて, できるだけ正方形になるように並べていきます. 

では,  N 日目までに折った鶴がちょうど一辺が  M の正方形に並べられるような  (N, M) の組を3つ求めてください. 

 N 日目までに折る鶴の数は

 \displaystyle 1+2+\cdots+N=\frac{1}{2}N(N+1)

また, 一辺  M の正方形に並べると  M^2 なので,

 \displaystyle \frac{1}{2}N(N+1)=M^2

という方程式が求まり, この方程式の自然数の解を求めればよいことが分かります.

まず, この方程式を変形してペル方程式の形にします.

両辺に8を掛けて,

 4N^2+4N=8M^2

 (2N+1)^2-1=8M^2

 (2N+1)^2-8M^2=1

 x=2N+1, y=2Mとおきなおすと,

 x^2-2y^2=1

となり, ペル方程式に帰着されました.

但し,  x=2N+1, y=2M なので,  x が奇数で  y が偶数の解を求めると, そこから  (N, M) の組が求まります.

ところで, これの解は前回の記事で求まっているので引用して,

最小解は  (x, y)=(3, 2)

また, 他の解は  (3+2\sqrt{2})^n=x+y\sqrt{2} から求めて

 (x, y)=(17, 12), (99, 70), \cdots

さて, これらはすべて  x が奇数,  y が偶数となっていますが, 実は今回の場合はすべての解について  x が奇数,  y が偶数となることが帰納法で証明できます.

この  (x, y)=(3, 2), (17, 12), (99, 70) から  N, M を求めると,

 (N, M)=(1, 1), (8, 6), (49, 35) となります.

最後に

今回の問題ではペル方程式に帰着できましたが, 一般に2次不定方程式  ax^2+bxy+cx^2+dx+ey+f=0 の''多く''は, ペル方程式に似た次の形に帰着できます.

\begin{align}
x^2-Dy^2=n\tag{1}
\end{align}

但し,  D n自然数.

ただし, この右辺の  n が1でないときは, この方程式は必ずしも解をもたないことが分かっています.

解をもつ場合については, その最小解を  (x_1, y_1) とし,  x^2-Dy^2=1 の最小解を  (x_0, y_0) とすると,  x_n+y_n\sqrt{D} = (x_1+y_1\sqrt{D})(x_0+y_0\sqrt{D})^{n-1} によってすべての解が得られます.

追記.

\begin{align}
ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0 \tag{2}
\end{align}

の形をした方程式の''多く''がペル方程式に似た(1)の方程式に帰着できることについて補足します.

すべての場合で帰着できるわけではなく, ここでは  a, c\neq 0,  4ac < b^2, (4ac-b^2)(-d^2+4af)<(2ae-bd)^2 とします.

(2)の方程式の左辺に  4a を掛けて  x について平方完成すると,

\begin{align*}
(2ax+by+d)^2+(4ac-b^2)y^2+(4ae-2bd)y-d^2+4af=0
\end{align*}

さらに, この両辺に  4ac-b^2 を掛けて, 残りの部分を  y について平方完成すると,

\begin{align*}
(4ac-b^2)(2ax+by+d)^2+\{(4ac-b^2)y+2ae-bd\}^2\\+(4ac-b^2)(-d^2+4af)-(2ae-bd^2)=0
\end{align*}

 X=(4ac-b^2)y+2ae-bd,  D=b^2-4ac>0,  Y=2ax+by+d,   n=(2ae-bd)^2-(4ac-b^2)(-d^2+4af)>0 とすると,

\begin{align*}
X^2-DY^2=n
\end{align*}

となります.

例.

(1) この記事の問題の例では,

 N(N+1)=2M^2

に対して,  x=2N+1, y=2M とおくことで,

 x^2-2y^2=1

となっています.

(2)  2x^2+4xy-3y^2-1=0

の場合, 両辺に 2 を掛けて平方完成すると,

 (2x+2y)^2-10y^2-2=0

となり,  X=2x+2y, Y=y として

 X^2-10Y^2=2

となります.