ペル方程式とは
今回の記事では, 前回書いたペル方程式を用いるの実際の問題例を説明します.ペル方程式は以下のようなものでした.
但し, は自然数の定数.
また, ペル方程式は解について次のような性質がありました.
詳しくは前の記事「ペル方程式とは」を見てください.
ペル方程式を用いる問題の例
ペル方程式とその解き方の例は前回の記事で説明したので, 実際の問題の例を解いてみます.問題. Aさんは毎日折り紙で鶴を折るのですが, 1日目には1つ, 2日目には2つ, 3日目には3つ, そして日目には 個折るものとします. 折った鶴は前日までに折ったものと合わせて, できるだけ正方形になるように並べていきます.
では, 日目までに折った鶴がちょうど一辺が の正方形に並べられるような の組を3つ求めてください.
また, 一辺 の正方形に並べると なので,
という方程式が求まり, この方程式の自然数の解を求めればよいことが分かります.
まず, この方程式を変形してペル方程式の形にします.
両辺に8を掛けて,
とおきなおすと,
となり, ペル方程式に帰着されました.
但し, なので, が奇数で が偶数の解を求めると, そこから の組が求まります.
ところで, これの解は前回の記事で求まっているので引用して,
最小解は
また, 他の解は から求めて
さて, これらはすべて が奇数, が偶数となっていますが, 実は今回の場合はすべての解について が奇数, が偶数となることが帰納法で証明できます.
この から を求めると,
となります.
最後に
今回の問題ではペル方程式に帰着できましたが, 一般に2次不定方程式 の''多く''は, ペル方程式に似た次の形に帰着できます.\begin{align}
x^2-Dy^2=n\tag{1}
\end{align}
但し, と は自然数.
ただし, この右辺の が1でないときは, この方程式は必ずしも解をもたないことが分かっています.
解をもつ場合については, その最小解を とし, の最小解を とすると, によってすべての解が得られます.
追記.
\begin{align}ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0 \tag{2}
\end{align}
の形をした方程式の''多く''がペル方程式に似た(1)の方程式に帰着できることについて補足します.
すべての場合で帰着できるわけではなく, ここでは , とします.
(2)の方程式の左辺に を掛けて について平方完成すると,
\begin{align*}
(2ax+by+d)^2+(4ac-b^2)y^2+(4ae-2bd)y-d^2+4af=0
\end{align*}
さらに, この両辺に を掛けて, 残りの部分を について平方完成すると,
\begin{align*}
(4ac-b^2)(2ax+by+d)^2+\{(4ac-b^2)y+2ae-bd\}^2\\+(4ac-b^2)(-d^2+4af)-(2ae-bd^2)=0
\end{align*}
, , , とすると,
\begin{align*}
X^2-DY^2=n
\end{align*}
となります.
例.
(1) この記事の問題の例では,に対して, とおくことで,
となっています.
(2)
の場合, 両辺に 2 を掛けて平方完成すると,
となり, として
となります.