数学の力

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ペル方程式とは


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ペル方程式とその解法

今日はペル方程式というものを紹介します.

1 次方程式や 2 次方程式では変数  x y は実数値をとりました. また, 高校で学習する不定方程式( 2x+3y=23 を満たす整数解を求める問題など)では, 変数  x, y が整数値をとりました. 今回紹介するペル方程式は自然数解を求める, 次のような問題です.

ペル方程式 :  x^2-Dy^2=1

但し,  D自然数の定数とする.

 

このままではどこから手をつけてよいか分かりませんが, 実は次のような面白い性質があり, それを利用すれば簡単に解くことができます.

ペル方程式の性質 :

1.  x^2-Dy^2=1自然数解のうち,  x の値が最小である解を  (x_1, y_1) とおくとき, 次のように自然数  x_n, y_n ( n=2, 3, \cdots)を定めると  (x_n, y_n) もまた方程式の解である

x_n+y_n\sqrt{D}=(x_1+y_1\sqrt{D})^n

2. ペル方程式の解はすべて1. によって得られる

 

例として, 方程式  x^2-2y^2=1 の解を求めてみましょう.

まず,  x の値が最小である解を見つけます.

 

 x=1 とすると  y=0 となり自然数でないので不適です.

 x=2 とすると  2y^2=3 となり, このような自然数  y は存在しません.

 x=3 とすると  y=2 となり, 解  (x_1, y_1)=(3, 2) が見つかりました.

 

では, 上で紹介した性質を使って他の解をいくつか求めてみます.

 

 (3+2\sqrt{2})^2=9+12\sqrt{2}+8=17+12\sqrt{2}

より,  (x_2, y_2)=(17, 12)

 (3+2\sqrt{2})^3=27+54\sqrt{2}+72+16\sqrt{2}=99+70\sqrt{2}

より,  (x_3, y_3)=(99, 70)

 

これらが方程式の解になっているかを確かめると,

 17^2-2\cdot 12^2=289-2\cdot 144=1

 99^2-2\cdot 70^2=9801-2\cdot 4900=1

となるので, 確かに方程式を満たしています.

 

次に, 一般解  (x_n, y_n) を求めてみます.

 (x_1+y_1\sqrt{D})^n=x_n+y_n\sqrt{D} が成り立つとき,

 (x_1-y_1\sqrt{D})^n=x_n-y_n\sqrt{D} が成り立つという性質(これは数学的帰納法で示すことができます) を用いて, これらの式を右辺の  x_n, y_n について解けば

 

 \displaystyle x_n=\frac{1}{2}\left\{(x_1+y_1\sqrt{D})^n+(x_1-y_1\sqrt{D})^n\right\}

 \displaystyle y_n=\frac{1}{2\sqrt{D}}\left\{(x_1+y_1\sqrt{D})^n-(x_1-y_1\sqrt{D})^n\right\}

 

と書くことができます.  x_n y_n自然数なのに, それを表す右辺の式がルートを含んでいるので不思議な感じですね.

 

上の例の場合を当てはめると,

 \displaystyle x_n=\frac{1}{2}\left\{(3+2\sqrt{2})^n+(3-2\sqrt{2})^n\right\}

 \displaystyle y_n=\frac{1}{2\sqrt{2}}\left\{(3+2\sqrt{2})^n-(3-2\sqrt{2})^n\right\}

となります.

 

上の性質の証明はここでは(長くなるので)詳しくはしませんが, 参考までに, 次のような流れで示すことができます.  (---> 詳しい証明はこちら(pdfファイルです)).

(1)  (x,y)=(a, b), (c, d) がともに解であるとき, 次で定める  (A_n, B_n) 及び,  (c^\prime, d^\prime) も方程式の解となることを示す.

(a+b\sqrt{D})^n=A_n+B_n\sqrt{D}

\displaystyle\frac{c+d\sqrt{D}}{a+b\sqrt{D}}=c^\prime+d^\prime\sqrt{D}

(2)  (x, y)=(p, q) がすべての解のうち xの値が最小のもの

 (p, q) がすべての解のうち  x+y\sqrt{D} の値を最小とするもの

を示す.

(3)  x+y\sqrt{D} の値を最小とする解を  (p, q) とすると, 任意の解  (x, y) について

 (p+q\sqrt{D})^n\leqq x+y\sqrt{D}<(p+q\sqrt{D})^{n+1} となる  n が存在するが, 各辺を  (p+q\sqrt{D})^n で割ることで,

 \displaystyle 1 \leqq \frac{x+y \sqrt{D}}{(p+q \sqrt{D})^n} < p+q\sqrt{D}

となる. 真ん中の項を有利化したときに  s+t\sqrt{D} になるとおくと,  (p, q) の解の最小性の仮定から  (s, t)自然数解ではなく  s=1, t=0 と求まる.

次回の記事で, 実際にペル方程式がでてくる問題をいくつか紹介します.