数学の力

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2変数関数の最大値~図形で考える(自作問題1-(10))


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問題.

今回は, 自作問題の1-(10), 2変数関数の最大値の解答・解説です.

 

問題. 

実数 p, q 0\leqq p<2\pi,\ 0\leqq q<2\piの範囲を互いに独立に動くとき,

 z=\dfrac{\cos{p}+\cos{q}}{3+\sin{p}+\sin{q}}

の最大値と, そのときの \sin{p}, \cos{p}, \sin{q}, \cos{q}の値を求めよ.

 

通常2変数関数の最大・最小値問題では, まず  q を固定して  p だけを変数と考えて最大・最小となる  p (通常  q の関数として表される)を求め, 次にその  p を代入して  q の身の関数として最大・最小値を求めます.

 

しかし, 今回の問題では与えられた z p微分しても複雑な式になり, 上手く解けません.

 

今回の場合, 分数の形をしているので,  zを座標平面上の2点を通る直線の傾きと見なして, 図形で考えていきます.




解答例.

 xy平面上で2点 A(3+\sin{p}, \cos{p}),  B(-\sin{q}, -\cos{q})を考える. このとき,

\begin{align*}
z = \frac{\cos{p}+\cos{q}}{3+\sin{p}+\sin{q}}
\end{align*}

は直線 ABの傾きを表しています.

 p, q 0\leqq p<2\pi,  0\leqq q<2\piの範囲で変化するとき, 点 Aは円 (x-3)^2+y^2=1上を, 点 Bは円 x^2+y^2=1上を, それぞれ独立に動く. 直線 ABの傾き zが最大となるのは, 図のように直線 ABの傾きが正で2円の共通内接線となっているとき.

 

 

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 O^\prime(3, 0)とし, 直線 AB x軸の交点を Pとする. 図形の対称性から \displaystyle P\left(\frac{3}{2}, 0\right).  AO^\prime=1,  \displaystyle PO^\prime=\frac{3}{2}なので,  \triangle{APO^\prime}三平方の定理から \displaystyle AP=\frac{\sqrt{5}}{2}となります.

直線 ABの傾きは,  APの傾きを計算すればよいが,  Aから x軸に下ろした垂線の足を Hとすれば \triangle{APH} \triangle{O^\prime PA}が相似であることから, 傾きは

\begin{align*}
\frac{AH}{PH} = \frac{AO^\prime}{PA} = \frac{2}{5}\sqrt{5}
\end{align*}

よって,  zの最大値は \displaystyle \frac{2}{5}\sqrt{5}. このとき, 2点 A, Bの座標を求めると,  \displaystyle A\left(\frac{7}{3}, \frac{\sqrt{5}}{3}\right),  \displaystyle B\left(\frac{2}{3}, -\frac{\sqrt{5}}{3}\right)となるので,  \displaystyle \sin{p} = -\frac{2}{3}, \cos{p} = \frac{\sqrt{5}}{3}, \sin{q} = -\frac{2}{3}, \cos{q} = \frac{\sqrt{5}}{3}.