問題.
今回は自作問題の10, 無限降下法による証明の例題です.をみたす自然数の組は存在しないことを示せ.
無限降下法について, 詳しい説明は「いろいろな証明の方法」を参照してください.
また, この問題を無限降下法を使わずに背理法で証明する場合についてはこの記事の最後で説明します.
解答例.
をみたす自然数の組が存在すると仮定します.
\begin{align}
2l^2 &= m^2-mn+n^2\\
&= m^2+n(n-m)
\end{align}
が奇数であると仮定すると, は奇数となり, また, とのうち一方が偶数となるのでは偶数となります.
よっては奇数となり, 一方で(1)の左辺は偶数なので矛盾します.
したがって, は偶数です.
ここで, (1)はとについて対称な式なので, 同様に右辺をと変形すると, も偶数であると分かります.
そこで, , とおくと,
\begin{align*}
2l^2 &= (2M)^2-(2M)(2N)+(2N)^2\\
&= 4(M^2-MN+N^2)
\end{align*}
となり, 両辺を2で割ると
\begin{align*}
l^2=2(M^2-MN+N^2)
\end{align*}
この式からが偶数なので, も偶数で, とおくと,
\begin{align*}
(2L)^2&= 2(M^2-MN+N^2)\\
2L^2&= M^2-MN+N^2
\end{align*}
よって, 条件式をみたすの組を仮定すると, それよりも小さい解が得られ, これをくり返すと無限に小さい解が求まることになるので矛盾します.
したがって, 条件式をみたすの組は存在しません.
追記:背理法で証明する場合
(無限降下法それ自体も背理法の一種ではありますが), 無限降下法を用いずに背理法で証明することももちろんできます. 今回の問題の場合は次のような方法が考えられます.
(i) 条件をみたす中でが最小の解の組をとおくと, がすべて偶数となり, さらに小さい解が見つかる.
(ii) の最大公約数が2以上であれば, それぞれをで割ったものも条件式をみたすので, 互いに素であるような解が存在することになります. しかし, 上の議論によりこれらはすべて偶数となるので互いに素であることに矛盾します.
(i)は本質的に無限降下法と同じことを言っています. 一方, (ii)では互いに素を仮定して矛盾を導いています(こちらが一般的かもしれません. の無理数性の証明では互いに素を仮定する方法がよく紹介されています).