数学の力

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京大2010年度理系[乙]第5問(数学的帰納法)


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問題.

次の問に答えよ.

(1)  n を正の整数,  a = 2^n とする.  3^a-1 2^{n+2} で割り切れるが  2^{n+3} で割り切れないことを示せ.

(2)  m を正の偶数とする.  3^m-1 2^m で割り切れるならば  m = 2 または  m=4 であることを示せ.

 

(1) は典型的な数学的帰納法の問題です.

 

ちなみに, この問題をより一般化して,

「正の整数  n, p に対して,  a = p^n とすると,  (p+1)^a-1 p^{n+2} で割り切れるが  p^{n+3} で割り切れない」

ことを p n の両方について帰納法を使うことで示すことができます.

(自作問題の問題31では,  (p+1)^{p^n} p^{n+1} で割り切れることを問うています. )

 

さて, (2) では (1)利用します.  m が 2 の累乗ではなく, 偶数となっている部分を上手く処理できるかがカギですね.

また,

\begin{align*}
X^s-1 = (X-1)(X^{s-1}+X^{s-2}+\cdots+X+1)
\end{align*}

 

の変形も覚えておきましょう.

 

 

解答例.

(1) 数学的帰納法を使います.

[1]  n=1 のとき

 a = 2 で,  3^a-1 = 8 2^{1+2} = 8 で割り切れ,  2^{1+3} = 16 では割り切れない.

よって,  n=1 のときは成り立つ.

 

[2]  n = k  (k\geqq 1)のとき成り立つと仮定すると,

 3^{2^k}-1 2^{k+2} で割り切れ,  2^{k+3} で割り切れないので,

\begin{align*}
3^{2^k}-1 = 2^{k+2}p
\end{align*}

と書けます ( p は奇数).

 

すると,

\begin{align*}
3 ^ {2 ^ {k+1}}-1 &= (3 ^ {2 ^ k}) ^ 2-1\\
&= (2 ^ {k+2}p+1)^2-1\\
&= (2 ^ {k+2}p) ^ 2 + 2\cdot 2 ^ {k+2}p + 1 - 1\\
&= 2 ^ {2k+4}p ^ 2 + 2 ^ {k+3}p\\
&= 2 ^ {k+3}p(2 ^ {k+1}+1)
\end{align*}

(指数の計算  3^{2^{k+1}} = (3^{2^k})^2 となる部分を間違えないように注意しましょう!!)

 

ここで,  p は奇数で,  k\geqq 1 より  2^{k+1}+1 も奇数なので,

 3^{2^{k+1}}-1 2^{k+3} で割り切れるが  2^{k+4} では割り切れない.

よって,  n = k + 1 のときも成り立つ.

 

したがって, [1], [2] より, すべての正の整数  n について

 3^{2^n}-1 2^{n+2} で割り切れるが,  2^{n+3} では割り切れない.

 

(2) (1)で証明したことを利用していきます.

 m 2^r で割り切れて  2^{r+1} で割り切れないような  r\geqq 1 を選んで,

 m = 2^r\cdot q

とおきます. ( q は奇数)

 

 3^m-1 が 2 で何回割り切れるかを調べます.

 b = 2^r とおいて,

\begin{align*}
3 ^ m-1 &=   3 ^ {bq}-1\\
&=   (3 ^ b) ^ q - 1\\
&=   (3 ^ b-1)\{(3 ^ b) ^ {q-1}+(3 ^ b) ^ {q-2}+\cdots+1\}
\end{align*}

 

(2 行目から 3 行目の変形がカギです. )

 

ここで, 右辺の  3^b-1 は (1) の結果から,  2^{r+2} で割り切れ,  2^{r+3} では割り切れません.

また,  (3^b)^{q-1}+(3^b)^{q-2}+\cdots+1 は各項は 3 の累乗なので奇数で,  q 個(奇数個) 足したものなので, 奇数, つまり 2 で割り切れません.

よって,  3^m-1 2^{r+2} で割り切れ,  2^{r+3} で割り切れないことが分かりました.

 

 3^m-1 2^m で割り切れるためには,

\begin{align*}
m\leqq r+2
\end{align*}

つまり,

\begin{align*}
2^rq\leqq r+2
\end{align*}

必要十分条件になっています.

 

 r \geqq 3 のときは,  2^r > r+2 となることが帰納法で示されるので,  q\geqq 1 に対して上の不等式は成り立ちません.

 

 r=1 のとき

 2^r = 2,   r+2 = 3 なので, 上の不等式を満たす  q q = 1 のみ,

 r=2 のとき

 2^r = 4,   r+2 = 4 なので, 上の不等式を満たす  q q = 1 のみ, となります.

 

したがって,  m としては  m = 2, 4 のみとなります.