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二項係数と組み合わせ問題


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二項係数と組み合わせ問題

二項係数に関するいろいろな公式があります.

これらは数式として証明できるだけでなく,組み合わせの数え上げ問題として解釈することができます.今回は,その例をいくつか紹介します.

二項係数
\begin{align*}
{}_nC_k = \dfrac{n!}{k!(n-k)!}
\end{align*}
  1.  n 個のものから  k 個を選ぶ選び方は  {}_nC_k 通り.
    1 個目の選び方が  n 通り,2個目の選び方が  n-1 通り,..., k 個目の選び方が  n+1-k 通りと考えると
    \begin{align*}
    n\cdot(n-1)\cdot\cdots\cdot(n+1-k) = \frac{n!}{(n-k)!}.
    \end{align*}
    しかし,この数え方では取り出す順番によって同じ組み合わせを  k! ずつ重複して数えているので,選び方は
    \begin{align*}
    \frac{n!}{(n-k)!}\times \frac{1}{k!} = \frac{n!}{k!(n-k)!}
    \end{align*}
    通りとなる.
  2. (二項定理)
     (a+b)^n を展開したときの  a^kb^{n-k} の係数は  {}_nC_k.
     (a+b)^n=(a+b)(a+b)\cdots (a+b) を,同類項をまとめずに展開したときに現れる項は, n 個のカッコのそれぞれから  a または  b を選んでかけ合わせたものとなる.例えば, (a+b)^3=(a+b)(a+b)(a+b) の場合,展開すると
     aaa, aab, aba, abb, baa, bab, bba, bbb
    の 8 項が現れる.
     a^kb^{n-k} の係数は,この中で  a k 個, b n-k 個含まれるものの個数となるが, n 個のカッコから k 個のカッコのを選んでそこからは  a を,残りのカッコからは  b を選ぶと考えることができるので, {}_nC_k となる.
  3. (二項係数の和)
    \begin{align*}
    \sum_{k=0}^n {}_nC_k = 2^n.
    \end{align*}
     {}_nC_0 n 個から  0 個選ぶ (つまり,どれも選ばない)  {}_nC_1 n 個から  1 個選ぶ

     {}_nC_k n 個から  k 個選ぶ

     {}_nC_n n 個から  n 個すべてを選ぶこれらすべての場合の数を足し合わせると, n この中からいくつかを選ぶ(1つも選ばなくてもいいし,すべてを選んでもいい) 方法の数となります.
    ところが,これは見方を変えると  n 個のそれぞれについて選ぶか選ばないか,の 2 通りずつあるので, 2^n 通りあります.
    つまり, \sum_{k=0}^n {}_nC_k = 2^n となります.
  4. \begin{align*}{}_{n+1}C_{k+1} = {}_nC_k + {}_nC_{k+1}.\end{align*}
    左辺は  n+1 個から  k+1 個を選ぶ選び方の個数です.
    これを,場合分けして数えてみましょう.分かりやすいように, n+1 個に  1, 2, \ldots, n+1 と番号をつけておきます.
    ・まず,番号  n+1 のものを選ぶとき
    番号  n+1 のものを選んで,全体では  k+1 個選ぶためには,残り ( 1, 2, \ldots, n) の  n 個の中から  k 個選ぶ必要があります.
    つまり, {}_nC_k 通りです.・次に,番号  n+1 のものを選ばないとき
    同じように考えると,残り ( 1, 2, \ldots, n) の中から  k+1 個を選ぶ必要があるので, {}_nC_{k+1} 通りです.よって, n+1 個から  k+1 個を選ぶ方法は,これらの和と一致するので,
     {}_{n+1}C_{k+1} = {}_nC_k + {}_nC_{k+1}.