数学の力

京大生が数学の定理・公式の証明や入試問題の解説をするブログ.

京大2022年度理系第2問

問題.

箱の中に1からnまでの番号がついたn枚の札がある.ただしn\geqq5とし,同じ番号の札はないとする.この箱から3枚の札を同時に取り出し,札の番号を小さい順にX, Y, Zとする.このとき,Y-X\geqq2かつZ-Y\geqq2となる確率を求めよ.

数字が連続しないような3枚を取り出す確率を求めよ,という問題です.

解説.

3枚の札の取り出し方の総数は
\begin{align*}
{}_nC_3 &= \frac{1}{6}n(n-1)(n-2)
\end{align*}
通り.

次に,Y-X\geqq2かつZ-Y\geqq2を満たす取り出し方を数えますが,ここではYの値ごとに数えることにします.

Y-X\geqq2かつZ-Y\geqq2を満たすとき3\leqq Y\leqq n-2であり,
Y=kのとき,

  • Y-X\geqq2 を満たす XX=1, \ldots, k-2k-2 通り
  • Z-Y\geqq2 を満たす ZZ=k+2, \ldots, nn-k-1 通り

なので,Y-X\geqq2かつZ-Y\geqq2を満たす取り出し方の総数は

\begin{align}
 \sum_{k=3}^{n-2}(k-2)(n-k-1) &= \sum_{m=1}^{n-4}m(n-m-3)\\
 &= -\sum_{m=1}^{n-4}m^2 + (n-3)\sum_{m=1}^{n-4}m\\
 &= -\frac{1}{6}(n-4)(n-3)(2n-7) + (n-3)\cdot\frac{1}{2}(n-4)(n-3)\\
 &= \frac{1}{6}(n-3)(n-4)\{-(2n-7)+3(n-3)\}\\
 &= \frac{1}{6}(n-2)(n-3)(n-4).
\end{align}

ただし,1行目では計算を楽にするためm=k-2とおいています.

したがって,求める確率は
\begin{align}
 \frac{\frac{1}{6}(n-2)(n-3)(n-4)}{\frac{1}{6}n(n-1)(n-2)} = \frac{(n-3)(n-4)}{n(n-1)}.
\end{align}

追記

上の計算結果をみると,Y-X\geqq2かつZ-Y\geqq2を満たす取り出し方の総数は{}_{n-2}C_3になっていることがわかりますが,これは次のように説明することができます.

1〜nから連続しない3個を取り出す場合の数は,白玉n-3個と赤玉3個を,赤玉が隣り合わないように1列に並べる場合の数と同じです(取り出す3つの数字が赤玉の位置に対応).

白玉n-3個と赤玉3個を,赤玉が隣り合わないように1列に並べたとき,左側の2つの赤玉の右隣にある白玉を取り除くと,白玉n-5個と赤玉3個を並べた状態が得られます.逆に,白玉n-5個と赤玉3個を1列に並べた状態に対して,左側の2つの赤玉の右隣に1個ずつ白玉を追加することで,白玉n-3個と赤玉3個を赤玉が隣り合わないように1列に並べた状態が得られます.

f:id:kuronekonosankaku:20220411113231j:plain

つまり,求めたかった場合の数は白玉n-5個と赤玉3個を1列に並べる場合の数に等しくなるので,{}_{n-2}C_3に一致します.

京大2022年度理系第1問, 文系第1問

問題.

5.4<\log_{4}{2022}<5.5であることを示せ.ただし,0.301<\log_{10}{2}<0.3011であることは用いてよい.


今年の問題も全体的に解く方針が分かりやすいものが多かったように感じます.

\log_{4}{2022}の値の近似値に関する問題です.計算してみると5.4と5.5の間というのが意外とゆるい近似であることがわかります.

京大入試では今回の問題のように対数の値は近似値ではなく範囲で与えられることが多いので,気をつけましょう.

解説.

\begin{align*}
\log_{4}{2022} &= \frac{\log_{2}{2022}}{\log_{2}{4}}\\
&= \frac{1}{2}\log_{2}{2022}
\end{align*}

まず,右の不等号について

\begin{align*}
2022 < 2048 = 2^{11}
\end{align*}

より,

\begin{align*}
\frac{1}{2}\log_{2}{2022} &< \frac{1}{2}\log_{2}{2^{11}}\\
&= \frac{1}{2}\cdot 11\\
&= 5.5
\end{align*}

次に,左の不等号について,

0<\log_{10}{2}<0.3011より

\begin{align*}
\log_{2}{10} &= \frac{1}{\log_{10}{2}}\\
&> \frac{1}{0.3011}\\
&= 3.32\ldots\\
&>3.3
\end{align*}

なので,

\begin{align*}
\frac{1}{2}\log_{2}{2022} &> \frac{1}{2}\log_{2}{2000}\\
&= \frac{1}{2}\log_{2}{2\cdot 10^3}\\
&= \frac{1}{2}(1+3\log_{2}{10})\\
&> \frac{1}{2}(1+3\cdot 3.3)\\
&= 5.45\\
&>5.4
\end{align*}

したがって,

5.4<\log_{4}{2022}<5.5

となる.

追記

上の解説を見るとわかりますが,\log_{4}{n}\,\,(n自然数)は2000< n < 2048のとき5.4<\log_{4}{n}<5.5をみたします.